ロマン派ピアノ・ソナタ2大傑作の深遠な世界
「音楽のない人生は考えられない。大好きなことを専門的に続けられる『ピアニスト』になろう」
7歳から「遊ぶように」してピアノを弾き始め、13歳でそう決心した少年は、いつしか人々から厚い信頼を得る音楽家へと成長した。ステファン・シュトロイスニック。彼のセカンドネームを片仮名表記に頼って読むと思わず舌を噛んでしまいそうだが、その上質感漂うピアノの音色と、自然かつ繊細な音楽の構築力には舌を巻く。生まれ育ったのはウィーン。
「おそらく世界のどの都市よりもウィーンには音楽があふれています。ウィーンという街そのものの美しさや、オーストリアの自然は多くの芸術家に影響を与えていると思います」
ウィーン・フィルの元コンサートマスター、ライナー・キュッヒルとの共演を重ね、日本でもデュオやトリオのステージで聴衆を惹き付けてきた。
「音楽的にも人間的にも共感でき、尊敬できる室内楽パートナーを見つけるのは本当に特別なこと。キュッヒルさんの場合はまさにそうでした。これまでにかけがえのない音楽的な経験をたくさん得ることが出来ましたし、今後もそうありたいですね」
11月のリサイタルではシューベルト最後のソナタ第21番、リストのロ短調ソナタという大作を披露する。
「どちらもピアノ音楽史における重要な到達点です。音楽的な内容が非常に魅力的であることは言うまでもありませんが、僕の人生における大切な瞬間にこれらの作品との出会いがあり、個人的な思い入れもあります。シューベルトの最後のソナタはとても抒情的で、おそらくピアノ作品の中で最も美しく感動的な緩徐楽章があります。一方、リストのソナタはリズミカルなモティーフと、巨大な建築のようでありながらも詩的要素を損なわない点が大きな特徴です」
この2つの大曲の間にシューマンの「幻想小曲集」より〈夕べに〉〈飛翔〉〈なぜに〉を挿入する。そのねらいとは?
「シューマンの3つの小品は、シューベルトとリストの大きなソナタをつなぐ作品として選びました。シューマンはシューベルトの音楽に非常に影響を受け尊敬していたと言われています。一方でリストはシューマンを崇拝しており、ロ短調ソナタをシューマンに捧げているのです」
1985年生まれのシュトロイスニックは、散歩と料理が大好き。
「新しいレシピを試すのが面白くてたまらない! 日本料理からもインスピレーションを得ています。11月の訪日を心待ちにしています」
取材・文:飯田有抄
(ぶらあぼ 2016年11月号から)
11/15(火)19:00 ヤマハホール
問:ヤマハ銀座ビルインフォメーション03-3572-3171
http://www.yamahaginza.com/hall