ウィーン国立歌劇場

“本場”ならではのR.シュトラウスの官能的な響きに浸る


ウィーンのリング通りのど真ん中に、堂々と威容を誇るウィーン国立歌劇場。まさに、世界に冠たる“オペラの殿堂”だけに、公演のクオリティは保証ずみだ。その伝統の歌劇場が450名の大集団で引っ越し公演を行う。
3つの演目はいずれも、ウィーンで評判になった舞台ばかりだが、真っ先にお薦めしたいのがR.シュトラウスの《ナクソス島のアリアドネ》だ。大成功した《ばらの騎士》のあと、文豪ホフマンスタールとの共同作業で完成を見た、他に類を見ない複雑な構造を持つ面白味あふれるオペラだ。初演の後に現在の形に改定され、1916年にウィーン宮廷歌劇場で初演されたゆかりの作品だ。指揮は今年のバイロイト音楽祭で《指環》全曲を振ったマレク・ヤノフスキ。R.シュトラウスのオペラはオーケストラの響きが鍵となるが、ウィーン国立歌劇場管弦楽団(ウイーン・フィルの母体)は、流れるように優美で、香りたつように官能的な独特の響きが特徴だ。またシュトラウスの音楽には欠かせない華やかで艶やかな響きも、このオーケストラならでは。ウィーン国立歌劇場の公演では、歌手とオーケストラと演出が混然一体となって醸し出す格調高い舞台を観ることができる。ツェルビネッタ役のダニエラ・ファリーをはじめ豪華歌手陣はもちろんだが、ベヒトルフのおしゃれで遊び心あふれる豪華な舞台も見どころだ。
他の演目では、《ワルキューレ》は歌手の顔ぶれが圧巻。現代最高のブリュンヒルデ歌いのシュテンメ、円熟の境地に入ったコニエチュニーの力強いヴォータンも聴きもの。《フィガロの結婚》は巨匠ムーティの指揮。人気のダルカンジェロをはじめ、旬の歌手が顔を揃える。
文:石戸谷結子
(ぶらあぼ 2016年10月号から)

《ナクソス島のアリアドネ》
10/25(火)19:00、10/28(金)15:00、10/30(日)15:00 東京文化会館
《ワルキューレ》
11/6(日)、11/9(水)、11/12(土)各日15:00 東京文化会館
《フィガロの結婚》
11/10(木)17:00、11/13(日)15:00、11/15(火)15:00 神奈川県民ホール
問:NBSチケットセンター03-3791-8888
http://www.nbs.or.jp