上岡敏之(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団


 これは超名曲集にして超新鮮なコンサートだ。9月から新日本フィルの音楽監督に就任した上岡敏之が打ち出した新機軸のひとつが、金曜と土曜の午後にすみだトリフォニーホールで行う『ルビー〈アフタヌーン コンサート・シリーズ〉』。就任記念を兼ねたその第1回が、「コリオラン」序曲、ヴァイオリン協奏曲、交響曲第5番「運命」によるベートーヴェンの超名曲プログラムである。
 上岡は、ザールランド州立歌劇場の音楽総監督、ヴッパータール市立歌劇場のインテンダント兼音楽総監督等を務めた、本場が認める名指揮者。ヴッパータール響や在京各楽団で聴かせた斬新な解釈でも名高い。だがそれは、慣習にとらわれずに楽譜や背景を見直すことから導き出された、“真の正攻法”ともいうべきアプローチ。ゆえに聴き慣れた名曲が新たな光を放ち、一瞬たりとも耳を離せなくなる。
 そんな彼が、いわゆる“午後の名曲公演”にも定期演奏会と等しい力を注ぐべく発案したのがこの『ルビー』。特に今回の演目が、新日本フィルとの方向性を知るにも、上岡の音楽作りを知るにも、もちろん名曲をハイレベルの演奏で楽しむにも、相応しいのは言うまでもない。中でも「運命」は、彼のこれまでのベートーヴェン解釈(「第九」など)からみて、耳を洗うような演奏の予感大。またソロ・コンサートマスター、崔文洙がソロを弾くヴァイオリン協奏曲も、厚い信頼関係を反映した名奏が期待される。
 さらには、公演前にホールに隣接する東武ホテルレバント東京の最上階で、東京スカイツリーを眺めながら楽しむ食事をセットにした「ランチプラン」もあるので、ぜひご注目あれ!
文:柴田克彦
(ぶらあぼ 2016年10月号から)

第1回 ルビー〈アフタヌーン コンサート・シリーズ〉
10/14(金)、10/15(土)各日14:00 すみだトリフォニーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815
http://www.njp.or.jp