ジョナサン・ノット(指揮) 東京交響楽団

ブラームスと新ウィーン楽派の深淵なる世界

 現在、東京のオーケストラ界において、最も興味深いプログラムで、最も音楽的な成果をあげているコンビは、ジョナサン・ノット&東京交響楽団に違いない。昨年の、リゲティで始まり、バッハ、R.シュトラウスを経て、ショスタコーヴィチで締め括られるプログラムはセンセーショナルな成功を収めた。また、アンサンブル・アンテルコンタンポランやバンベルク交響楽団のシェフを歴任し、ヨーロッパで最も注目される指揮者の一人に数えられるノットが東京交響楽団の音楽監督の任期を2026年(!)まで延長すると発表したのも驚きだった。
 4月の定期演奏会の選曲も非常に凝っている。シェーンベルクの「ワルシャワの生き残り」、ベルクの《ルル》組曲、ブラームスの「ドイツ・レクイエム」。新ウィーン楽派の2人の作曲家の作品のあと、ウィーンで活躍したブラームスの作品に戻るというプログラム。シェーンベルクは、ブラームスのピアノ四重奏曲第1番を管弦楽用に編曲するなど、先輩作曲家を尊敬し、影響も受けた。「ワルシャワの生き残り」は「語り手、男声合唱、管弦楽のための」と記され、語り手はクレシミル・ストラジャナッツが務める。《ルル》組曲ではチェン・レイスがルルを歌う。凄絶な運命をたどった一人の男と一人の女の物語。それぞれのソリストが後半の「ドイツ・レクイエム」で歌うのも意味深長である。既に国際的に注目されている新進気鋭の2人の歌唱も楽しみだ。
文:山田治生
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年4月号から)

第55回 川崎定期演奏会
4/23(土)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
第639回 定期演奏会
4/24(日)14:00 サントリーホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511
http://tokyosymphony.jp