ギドン・クレーメル(ヴァイオリン) & クレメラータ・バルティカ “ニュー・シーズンズ”

鬼才が描く新しい「四季」

ギドン・クレーメル ©Andreas Malkmus/ECM Records
ギドン・クレーメル ©Andreas Malkmus/ECM Records

 「フォー・シーズンズ」(四季)…ではなく「ニュー・シーズンズ」? ギドン・クレーメルが提示してくれる音楽の新しいフォルムは、敏感なアンテナを持つ聴き手に対して常に挑戦的であり続け、試金石のように存在を誇示してくる。「これを聴いておかないと時代に乗り遅れるかもしれないよ」という具合に。
 ヴィヴァルディの「四季」を軸として、ピアソラほか多彩な「四季」を巻き込んできたのが、クレーメルの(言わば)“シーズンズ・プロジェクト”。その新しいプレゼンテーションが「ニュー・シーズンズ」であり、今年の7月にドイツ・グラモフォンからCDがリリースされたばかりだ。今回の来日公演はそのCDからも、反復音楽の迷宮とバロック音楽におけるアレグロの快感が混在したようなフィリップ・グラスの「アメリカの四季」(ヴァイオリン協奏曲第2番)を演奏。また、クレーメルがその音楽性に惚れ込んで委嘱した梅林茂作曲の「日本の四季」は、来日公演だからこそ、日本の聴衆だけが感じることのできる特別な体験をもたらしてくれるだろう。さらには、もはやクレメラータ・バルティカの持ち曲となった感のあるピアソラの「ブエノスアイレスの四季」ほか(ピアソラを最初にクラシック音楽シーンへ持ち込んだ一人が、クレーメルであったことを再認識したい)、すべて興奮を呼び起こす曲ばかりだ。彼らのコンサートは、新しい発見を目的とした一夜の旅である。
文:オヤマダアツシ
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年10月号から)

10/21(水)19:00 サントリーホール
問:ミュージックプラント03-3466-2258
http://www.mplant.co.jp

他公演
10/23(金)神奈川県立音楽堂(チケットかながわ0570-015-415)、10/24(土)愛知県芸術劇場コンサートホール(中京テレビ事業チケットセンター052-320-9933)、10/25(日)兵庫県立芸術文化センター(0798-68-0255)