
研究と演奏活動を完全に両立させる才人たちがいる。近藤伸子も間違いなくその一人に数えられよう。シュトックハウゼンのピアノ音楽研究により東京藝術大学で博士号を取得し、20世紀作品とバッハ作品を交互に取り上げた1993年からのリサイタル・シリーズは高く評価された。
近年はベートーヴェン研究のために1年間ドイツに滞在し、2019年からのピアノ・ソナタ全曲演奏シリーズでその成果を世に問うている。今回は「2つのやさしいソナタ」と題された平易で気品ある第19、20番から温情に溢れた中期の名作「告別」ソナタまで、ベートーヴェン20代末から30代末にかけての創作上の広がりをつぶさに体感できる作品群が揃う。近藤の本シリーズは室内楽曲や歌曲が組み合わされてきたことも魅力の一つだが、前回に引き続き名手・河野文昭が出演してチェロ・ソナタ第4番が披露される。総じてベートーヴェンの内的な深みが増していく過程が精緻に描き出される一夜となりそうだ。
文:近松博郎
(ぶらあぼ2026年1月号より)
近藤伸子 ベートーヴェンシリーズ 第7回
2026.1/29(木)19:00 東京文化会館(小)
問:東京コンサーツ03-3200-9755
https://www.tokyo-concerts.co.jp

