ピアニスト矢沢朋子が探求する“モダーン・トライバル”

 矢沢朋子は、桐朋学園大学を卒業後、パリのエコール・ノルマルで研鑽を積んだピアニストである。オリヴィエ・メシアンの夫人イヴォンヌ・ロリオやクロード・エルフェといった現代音楽のスペシャリストたちに師事。アメリカでも現代音楽の研究を重ね、2001年に帰国。その後も国内外の作曲家と様々な形でコラボレーションを行い、現在はマルチメディア・プロジェクト“Absolute-MIX”、音楽レーベル“Geisha Farm”を主宰するなどその活動はさらに幅広さを増している。

 2011年からは沖縄を拠点に多彩な音楽発信を行っており、平石博一など知られざる名作曲家の作品の普及にも努めている。その矢沢が今回行うのは、2台のピアノと打楽器のコラボレーションによるコンサートだ。この編成で最も有名かつ難曲でもあるバルトークの「2台ピアノとパーカッションのためのソナタ」を中心に据え、尾高賞はじめ数多くの賞を獲得するなど日本を代表する作曲家である権代敦彦による同編成作品の新作初演も行われる。

 アイスラーやノーノと並ぶ前衛音楽の作曲家、コーネリアス・カーデューの「ブーラヴォーグ」、日本が世界に誇る三善晃の「響象」といった作品も並び、ピアノという楽器の奏法の多様性と音色の可能性の探求が行われていく。ロシア・ピアニズムの研究者であり多彩なレパートリーを誇るピアニストの比嘉洸太、多くの受賞歴を誇る注目の打楽器奏者の新野将之、琉球交響楽団 打楽器奏者の屋比久理夏との共演で実現する新たな音世界は聴き逃せない。

文:長井進之介

(ぶらあぼ2025年10月号より)

Absolute-MIX Presents 2025 2台ピアノとパーカッションで巡る バーバリズム・アーカイヴ
2025.11/5(水)18:30 那覇文化芸術劇場なはーと(小)
12/5(金)18:00 五反田文化センター音楽ホール
問:クレオム info@creomu.com


長井進之介 Shinnosuke Nagai

国立音楽大学大学院修士課程器楽専攻(伴奏)修了を経て、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得。在学中、カールスルーエ音楽大学に交換留学。アンサンブルを中心にコンサートやレコーディングを行っており、2007年度〈柴田南雄音楽評論賞〉奨励賞受賞(史上最年少)を機に音楽ライターとして活動を開始。現在、群馬大学共同教育学部音楽教育講座非常勤講師、国立音楽大学大学院伴奏助手、インターネットラジオ「OTTAVA」プレゼンターも務める。
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