【CD】ヘンゼルト:エチュード全集/田所光之マルセル

 多彩なピアノ作品に精通する若きヴィルトゥオーゾ、田所光之マルセルが、実に彼らしい選曲でCDデビューを飾った。ショパンやリストと同時代人で、ドイツからロシアへ渡った作曲家・ピアニストのヘンゼルトによるエチュード全集だ。「12の性格的練習曲」や「12のサロン用練習曲」はたんなる“練習”曲の域を超え、19世紀のピアノ音楽の持つロマン的性格や技巧性が追求された作品群であり、ロシア・ピアニズムの発展にとっても重要作である。田所はそうしたヘンゼルトの功績に光を当て、その研ぎ澄まされた技術と解釈により、この作曲家の魅力をたっぷりと伝える。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2025年7月号より)

【information】
CD『ヘンゼルト:エチュード全集/田所光之マルセル』

ヘンゼルト:12の性格的練習曲、12のサロン用練習曲、練習曲 イ短調、牧童の別れの言葉(ゴンドラ)

田所光之マルセル(ピアノ)

ナクソス・ジャパン
NYCX-10527 ¥2530(税込)


飯田有抄 Arisa Iida(クラシック音楽ファシリテーター)

音楽専門誌、書籍、楽譜、CD、コンサートプログラム、ウェブマガジン等に執筆、市民講座講師、音楽イベントの司会等に従事する。著書に「ブルクミュラー25の不思議〜なぜこんなにも愛されるのか」「クラシック音楽への招待 子どものための50のとびら」(音楽之友社)等がある。公益財団法人福田靖子賞基金理事。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Macquarie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。