
武蔵野音楽大学・同大学院を卒業した後、ニューヨークのマネス音楽院で学び、2006年にメトロポリタン歌劇場で《魔笛》の〈夜の女王〉を歌って絶賛された森谷真理。日本でも各所で大活躍中である。一方で、昨年から王子ホールでスタートした「森谷真理 Spirit of Language -言霊- 」のシリーズ第1回では、詩人ボードレール、ヴェルレーヌ、マラルメなどの詩を元に書かれた近代フランス歌曲を集めて、これまで知られてこなかった森谷の新たな一面を見せてくれた。
その第2回は「Harawi 愛と死の歌」とサブタイトルが付けられ、アルバン・ベルク「初期の7つの歌」とメシアン「ハラウィ 愛と死の歌」が取り上げられる。特に注目されるのがメシアンの「ハラウィ」だ。大学の音楽史の授業でメシアンという作曲家を知り、アメリカ留学中にコレペティトゥアの先生からこの曲でコンクールに挑戦してみないかと提案されて、初めて取り組んだという。1945年に書かれた「ハラウィ」は全12曲から構成される大作で、民族音楽学者であったダルクール夫妻が収集したペルーの民謡集に基づいた作品。歌詞はメシアン自身によるが、「ハラウィ」とは“抵抗しようのない、しかし成就しない愛”を思い起こさせる言葉だという。フランス語の他、ペルーのケチュア語に基づく擬音、人工語も盛り込まれている難曲として知られ、全曲を聴けることはあまりない。ピアノは共演を重ねる山田武彦。まさに旬の歌手である森谷の歌唱で、メシアンの傑作を聴く貴重な機会となる。
文:片桐卓也
(ぶらあぼ2025年5月号より)
森谷真理 Spirit of Language -言霊- Vol.2
2025.6/13(金)19:00 王子ホール
問:王子ホールチケットセンター03-3567-9990
https://www.ojihall.jp