新日鉄住金音楽賞 第23回受賞者決定

 第23回新日鉄住金音楽賞(旧称・新日鉄音楽賞)の受賞者が、<フレッシュアーティスト賞>松田理奈(ヴァイオリン)、<特別賞>栗本尊子(メゾ・ソプラノ)に決定した。
 新日鉄住金音楽賞(旧称・新日鉄音楽賞、平成24(2012)年10月より改称)は、平成2(1990)年に新日本製鐵株式会社(現・新日鐵住金株式会社)の創立20周年と、同社が提供してきた「新日鉄コンサート」放送35周年を記念して設けられた音楽賞。この賞を通して、日本の音楽文化の発展と、将来を期待される音楽家の方々の一層の活躍を支援することを目的としている。
 贈呈記念行事は、平成25(2013)年7月17日(水)に、紀尾井ホール(東京都千代田区紀尾井町6番5号)で開催の予定。
 
 
第23回 新日鉄住金音楽賞

<フレッシュアーティスト賞> 副賞300万円

松田理奈 まつだ・りな
(ヴァイオリン)
 
【贈賞理由】
若手ヴァイオリニストの中でも、松田理奈はとりわけ光る音楽性を持っている。豊かな歌心と自然な息遣いのうちに作品の特質を美しく表現する彼女の演奏にはいささかの外連味もなく、音楽に対する誠実さが感じられる。そうした真摯な姿勢を高く評価し、今後本格派ヴァイオリニストとしてのさらなる成熟を強く期待して、今回の受賞者に決定した。
(選考委員・寺西基之)
 
 
 
 
 
 
 
 
<特 別 賞> 副賞100万円

栗本尊子 くりもと・たかこ
(メゾ・ソプラノ)
 
【贈賞理由】
いま栗本尊子氏の歌声を聴いて、そのお年が九十歳台半ば近くと信じる人はいるだろうか。透明で艶やかで、仄かに乙女の息吹さえ感じられるような瑞々しさ。そして今日まで現役という圧倒的存在感。まさに「現代の奇蹟」「日本楽壇の至宝」ともいうべき栗本尊子氏に、心から「永遠なれ」との思いを込めて、特別賞をお贈りしたいと思います。
(選考委員・中村紘子)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
【受賞者紹介】
松田 理奈 まつだ・りな(ヴァイオリン) 
 
1985年(昭和60年)9月30日、神奈川県出身。
東京芸術大学音楽学部附属音楽高等学校卒業後、桐朋学園大学ソリスト・ディプロマコースにて研鑽を積み、2006年ドイツ・ニュルンベルク音楽大学に編入。2007年に同大学、2010年には同大学院をそれぞれ首席にて卒業。1999年に初ソロリサイタルを開催した後、2001年第10回日本モーツァルト音楽コンクールヴァイオリン部門第1位、同コンクール史最年少優勝。2002年にはトッパンホールにて「16才のイザイ弾き」というテーマでソロリサイタル開催。2004年、第73回日本音楽コンクール第1位。併せてレウカディア賞、鷲見賞、黒柳賞受賞。2007年、サラサーテ国際コンクールにてディプロマ入賞。第12回ホテルオークラ音楽賞、秋吉台音楽アカデミー賞受賞。これまでにNHK交響楽団室内オーケストラ、東京交響楽団、東京都交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、札幌交響楽団、大阪フィルハーモニー交響楽団、ヤナーチェクフィルハーモニー室内管弦楽団、ベトナム交響楽団など数々のオーケストラや著名指揮者と共演。2006年ビクターエンタテインメントよりデビューアルバム『ドルチェ・リナ〜モーツァルト2つのヴァイオリン・ソナタ他』をリリース。全国ツアーを各地完売で沸かせた後、2008年巨匠パーヴェル・ギリロフと録音した『カルメン』、2010年には紀尾井ホールにて清水和音とのリサイタルをライブ収録した『ラヴェル・ライブ』をリリースした。同年収録のイザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ全曲集は、「レコード芸術」誌上にて特選盤に選ばれた。
 
【受賞者紹介】
栗本 尊子 くりもと・たかこ(メゾ・ソプラノ)
 
1920年(大正9年)5月9日、福岡県出身。
東京音楽学校(現 東京芸術大学)卒業。リア・フォン・ヘッサートに師事。1946年『蝶々夫人』のスズキ役でデビュー以来、『フィガロの結婚』『コジ・ファン・トゥッテ』をはじめ、『ばらの騎士』『カルメン』『こうもり』『ポッペアの戴冠』『ピーター・グライムズ』『泥棒とオールドミス』など、バロックから現代作品に至る諸作、さらに『黒船』『聴耳頭巾』『修禅寺物語』など邦人作品を中心に、数多くのオペラ公演で主要な役を務め、その大半が日本初演だった。NHK交響楽団の『第九』のソリストをはじめとするコンサートでも活躍。1977年以来、日本歌曲によるリサイタルもしばしば開催している。その一方で、洗足学園大学教授として後進の指導にも情熱を注いでいた。2002年に開催され話題を呼んだ〈グレート・マスターズ〜日本音楽界をささえつづけるアーチストたち〜〉公演(紀尾井ホール)において、その入魂の絶唱が会場を沸かせた。その後、2回の日本歌曲リサイタルを開催し、満員の聴衆を集めている。「栗本尊子の声は、日本音楽界の奇蹟です」(畑中良輔氏)との言にあるように、日本歌曲の真髄である言葉の美しさと感情表現にみられる〈うた〉芸術とあいまって、その歌唱には何人にも及びもつかない未踏の高みが示されている。2006年8月、長年の演奏活動で初のCDとなる「愛と祈り〜歌いつがれる日本のうた」を発表。年齢という概念すら超越したその瑞々しい歌声は、聴き手に大きな驚嘆と感動をあたえ、各方面で話題となった。2010年5月、母校である福岡女学院の創立125周年記念式典に招かれ見事な歌声を披露し話題となった。2012年7月には、自身の半生を綴った書籍付きCD「奇蹟の歌」をリリース。二期会名誉会員。