国立西洋美術館で中世・写本の展覧会「内藤コレクション 写本 — いとも優雅なる中世の小宇宙」開催

【読者プレゼント】5組10名様をご招待

 東京・上野の国立西洋美術館で、企画展「内藤コレクション 写本 — いとも優雅なる中世の小宇宙」が6月11日から始まった。今回公開されているのは、2015年度に同館に寄贈された、筑波大学・茨城県立医療大学名誉教授の内藤裕史氏が所有するコレクションを中心とした写本リーフ(紙葉)を中心に約150点。時代的には13世紀から16世紀、ヨーロッパ各地の聖書や詩編集、時祷書、そして聖歌集などを中心とした貴重な写本群がまとまった形で展示される、非常に貴重な機会となる。会期は8月25日まで。

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中世の知と美が凝縮された写本

 15世紀に印刷技術が発明される以前、中世のヨーロッパでは、書物は人の手によって書き写された。羊皮紙など動物の皮をうすく伸ばしてつくられた紙に、羽根ペンで筆写されたテキストと華やかな彩飾が施された写本は、まさに当時の知と美が結集された、芸術品ともいうべきものである。壁画やタペストリーに比べて保存状態が良いのは、本の中で保護されることで、破損や散逸を免れてきたという側面があるようだ。大部分は、聖書や典礼で使用されるテキストや楽譜など宗教的な内容で占められており、写本は伝達の手段であると同時に、信仰生活を支えるものでもあった。

6月10日におこなわれたプレス向け内覧会より

見どころは聖歌の楽譜

 今回の展示では、詩編を中心とした聖書を書き写したものを筆頭に、9つの展示に分類されているが、音楽ファンにとって最も興味深いのは、修道院や教会の典礼儀式において最も重要な、聖務日課とミサのセクションだろう。メインとなるのは、聖務日課(聖職者が一日を通して行う定時の礼拝のサイクル)やミサのなかで歌われる単旋聖歌をまとめた聖歌集である。イングランド、フランス、ネーデルラント、ドイツ、イタリアと地域も多岐にわたり、主に中世から盛期ルネサンスにかけての写本の諸相をたどることができる。

カマルドリ会士シモーネ彩飾 《典礼用詩編集零葉》
イタリア、フィレンツェ 1380年頃 彩色、インク、金/獣皮紙 内藤コレクション(⾧沼基金)国立西洋美術館蔵
ジョヴァンニ・ディ・アントニオ・ダ・ボローニャ彩飾《典礼用詩編集零葉》
イタリア、ボローニャ 1425-50年 彩色、インク、金/獣皮紙 内藤コレクション 国立西洋美術館蔵
パヴィアのサン・サルヴァトーレ聖堂のミサ聖歌集の画家彩飾《ミサ聖歌集零葉》
イタリア、パヴィア 1480-85年頃 彩色、インク、金/獣皮紙 内藤コレクション 国立西洋美術館蔵

 4線の譜線のうえに書かれた楽譜には、装飾イニシャル(文頭の飾り文字)が置かれ、四角い音符と独特の伝統的な書体によるラテン語のテキストが記されている。数人で楽譜を囲みながら歌いやすいように比較的大型の判型を持つものもあり、リーフの端が黒ずみ、まさにめくって実際に使用していた痕跡がみられる場合もあるという。楽譜を取り囲むように、ページ余白に枠装飾が施された写本も多い。また、16世紀に入ると、印刷技術の普及に伴い、金属凸版による印刷工程が終了した紙葉に手彩色を施したものもみられるようになるなど、時代が下るにつれて「印刷写本」と呼ばれるものが増えてくるのも興味深い。

左は、1400-25年頃イタリア、金を施した装飾イニシャルが美しい

 いにしえの修道士・修道女や名もなき人々が丹精込めて手仕事で書き記した紙葉の数々。世界各地からコレクターが半生をかけて収集した彩飾芸術の美は、あらゆるものがデジタル化されている現代のわれわれに、そのぬくもりの価値を教えてくれる。

取材・文:編集部

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【Information】
国立西洋美術館
「内藤コレクション 写本 — いとも優雅なる中世の小宇宙」

会期:2024.6/11(火)〜8/25(日)
開館時間:9:30~17:30(金・土曜日は9:30~20:00)
※入館は閉館の30分前まで
休館日
月曜日、7/16(火)(ただし、7/15(月・祝)、8/12(月・休)、8/13(火) は開館)
会場:国立西洋美術館(〒110-0007 東京都台東区上野公園7-7)
入場料:一般1,700円、大学生1,300円、高校生1,000円