2024年6月の海外公演情報

Wiener Staatsoper Photo by Dimitry Anikin on Unsplash

『ぶらあぼ』誌面でご好評いただいている海外公演情報を「ぶらあぼONLINE」でもご紹介します。海外にはなかなか出かけられない日々が続きますが、“妄想トラベル”を楽しみましょう!
[以下、ぶらあぼ2024年3月号海外公演情報ページ掲載の情報です]

曽雌裕一 編

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 先月同様、6月も音楽祭公演が非常に多く、一般公演のデータを省略したケースが少なくないので、ぜひHPで補足確認をお願いしたい。

 6月の定例音楽祭といえば、まずは「ミュンヘン・オペラ・フェスティバル」。今年は、ケント・ナガノ指揮でリゲティの「ル・グラン・マカーブル」というこのフェスティバルとしては異色の現代作品が採り上げられる。しかも、ナガノは6月初旬には「ハンブルク国際音楽祭」で舞台演出付の演奏会形式ながらメシアンのオペラ「アッシジの聖フランチェスコ」を上演する。大変意欲的でどちらも見逃せない。

 次に「ライプツィヒ・バッハ音楽祭」。毎年6月に行われるバッハ・ファミリー中心の音楽祭。教会での小演奏会を含めると約10日間のうちに160公演が開催されるため、本文では限られた注目公演しか掲載できてはいない。ただし、ガーディナー、コープマン、ヘレヴェッヘといった有名指揮者の注目公演に混じって、今年は樋口隆一指揮明治学院大学バッハ・アカデミーの演奏会を掲載した。社会人中心のアマチュア合唱団ではあるが、樋口先生の下、着実な活動を続けているアンサンブルの海外初遠征ということで、注目度は高い。

 また、若干マニアックではあるが、スメタナに的を絞った「スメタナ・リトミシュル音楽祭」というのも面白い。リトミシュルはスメタナ生家がある町で、その中心部にあるリトミシュル城は世界遺産。このお城のホールでは、今年は、「悪魔の壁」「リブシェ」「秘密」「ダリボル」といったスメタナの珍しいオペラが次々と上演される。もちろん「売られた花嫁」もある。他には、「ラインガウ音楽祭」、「キッシンゲンの夏音楽祭」なども、6月から始まる今や古参の音楽祭。6月以前からスタートしているものには「ムジークフェライン・フェスティバル」「ハンブルク国際音楽祭」「ドレスデン音楽祭」「ハレ・ヘンデル音楽祭」「モーツァルト・フェスト(ヴュルツブルク)」「ルール・ピアノ・フェスティバル」「フィレンツェ五月音楽祭」「グラインドボーン・オペラ・フェスティバル」などがある。ドレスデンはミンコフスキ指揮ドレスデン音楽祭管のオッフェンバック「ラインの妖精」、ヴュルツブルクではルセ指揮レ・タラン・リリクのモーツァルト「コジ・ファン・トゥッテ」などが注目公演。なお、ルセ指揮レ・タラン・リリクはパリ・オペラ・コミークで、リュリ「アルミード」の公演にも登場する。

 音楽祭以外では、ベルリン州立歌劇場のムソルグスキー「ホヴァンシチナ」、ドレスデン・ゼンパーオーパーのベルリオーズ「ベンヴェヌート・チェッリーニ」、フランクフルト歌劇場のアレヴィ「ユダヤの女」、チューリヒ歌劇場のヴェルディ「シチリア島の夕べの祈り」、ミラノ・スカラ座のマスネ「ウェルテル」、フェニーチェ歌劇場のヴィヴァルディ「タメルラーノ」、パリ・オペラ座のスポンティーニ「ヴェスタの巫女」あたりがオペラ新演出公演の注目。大野和士はモネ劇場でプッチーニ「トゥーランドット」を振る。現代物では、ジョン・アダムズの作品がウィーン・フォルクスオーパー、ベルリン・ドイツ・オペラ、ダルバヴィの作品がベルリン州立歌劇場、アダメクの作品がケルン歌劇場で上演され、いずれも注目。

 オーケストラでは、バイエルン放送響の指揮者陣が凄い。6月はムーティ、ラトル、ウェルザー=メスト、ガーディナーと続く。日本のオケではまず実現できない豪華さで羨ましい限り。他には、ベルリン・ドイツ響とシュターツカペレ・ドレスデンを指揮するソヒエフ。特に後者は曲目がショスタコーヴィチの交響曲第7番なのでこれは絶対の聴きもの。また、同じオケにはチョン・ミョンフン指揮のメシアン「トゥーランガリラ交響曲」という興味深いプロもある。個人的には、ウィーン・フィルを振るヴィオッティに期待したい。さらには、ドレスデン音楽祭で歌い・演じるコパチンスカヤのシェーンベルク「月に憑かれたピエロ」はやはり見逃せない。

(曽雌裕一・そしひろかず)
(コメントできなかった注目公演も多いので本文の◎印をご参照下さい)