言葉の陰影を映し出すさまざまな息遣いに耳を傾けて
多種多様な息=声の饗宴である。アンサンブル・ノマドの今年度のテーマは「プシュケー・息」。ギリシャ語で息を指し、生命や魂をも示唆する含蓄のある言葉だ。第80回となる定期「うたうだけ」では、人間存在の根源であり、種々の感情を豊かに映し出す声の魅力にスポットを当てる。腕利きの奏者がそろうアンサンブル・ノマドのメンバーとともに、ゲスト出演するのが、小林沙羅。変幻自在な声を駆使して、オペラから現代作品まで、幅広いレパートリーを誇るソプラノだ。取り上げられる作品は、ラヴェルの「ステファヌ・マラルメの3つの詩」、ファリャの「7つのスペイン民謡」(編曲:壷井一歩)などに加え、伊左治直、武満徹、藤倉大といったユニークな声の使い手たちの曲がそろった。使用言語も様々で、色とりどりの歌の世界を堪能できる。人間の心にストレートに訴えかけてくる声の力。混迷する世情の中、アンサンブル・ノマドによる訴求力は私たちに格別の感興をもたらすだろう。
文:伊藤制子
(ぶらあぼ2023年12月号より)
2023.12/16(土)14:00 東京オペラシティ リサイタルホール
問:キーノート0422-44-1165
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