坂下忠弘(バリトン)

年末のひと時を“癒しの声”で

 活躍目覚ましい新進バリトン坂下忠弘が、定例のクリスマス・コンサートでもあるリサイタルに寄せて語ってくれた。まず、会場のsonorium(ソノリウム)について。
「いくつも訪ねて辿りついた極上の空間です。お客様と一体になれる100席の親密なホールで、天井高は6メートルという贅沢さ、まさに演奏のための特別な場所です。演奏を磨けば磨くほどその輝きがお客さまに伝わる音響、シンプルで主張しすぎない洗練された建築デザイン。ソノリウムでは、曲の持つイメージをホールとともに創造することができます」
 今回は、ラヴェル〈ドゥルシネア姫に寄せるドン・キホーテ〉のような大人の恋の歌からピアソラなど南米の作曲家、さらにはスピリチュアルやミュージカルの名曲まで様々な歌の世界を展開。坂下の持つ幅広いレパートリーからの内容の濃い豊かなプログラム。彼の実力と、評判高い才能、エレガントでありながら聴く人に同時に情熱を届ける演奏に触れられる最高のステージだ。
「全体を3部に分けました。まずは得意のフランスもの。休憩を挟んで第2部では南米の歌曲を。アルゼンチンの作曲家ラミレスの〈アルフォンシーナと海〉は、メロディもスペイン語の歌詞も本当に綺麗なスロー・サンバで、どんな風に歌おうか、少しこぶしを効かせようかなど表現を練っているところです。ピアソラの〈Oblivion〉は仏語で歌います。詩の語感が柔らかく美しい曲ですね。同じくピアソラの〈失われた小鳥たち〉はスペイン語の歌。宗教曲のような静かなメロディとタンゴ調の部分の対照の妙を愉しんで頂きたいです」
 そして、くだけたムードのメロディも楽しめる第3部では、スピリチュアルの名曲やミュージカルからの歌曲も取り上げる。
 さまざまな国の個性豊かな作曲家たちの作品をフランス語、スペイン語、英語という多言語で表現する意欲的なプログラムは坂下のリサイタルが注目される所以のひとつ。共演するピアニストは高い評価を受ける江澤隆行。歌とともに難度の高いフランス歌曲のアンサンブル、ラヴェル作品のピアノソロにも期待したい。
「忙しい年末だからこそ、癒しの時として、皆さまが『ホッ』とできるような歌の世界を創り上げます。ご来場をお待ちしています!」
取材・文:岸 純信(オペラ研究家)
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年12月号から)

12/20(土)15:00 sonorium
問:03-6320-2834(Tel/Fax) 
http://www.sonorium.jp