【SACD】ショスタコーヴィチ:交響曲第2番 他/アンドリス・ネルソンス&ボストン響

 ネルソンスとボストン響のショスタコーヴィチ・交響曲全集の完結編。毎回、組み合わせの意味深さに唸ってきたが、第2、3、12、13番という今回の流れは圧巻である。作曲者とソ連体制との関係の変化が凝縮されているのだ。共産主義の理想を前衛性と平明さの両面で表現した第2、3番。形骸化した社会主義リアリズムの第12番と、ソ連国家の暴挙を告発する第13番。ネルソンスは今回も厚みのある安定した響きを基盤とした、高精度のバランス感覚で聴かせる。だからこそ、それぞれの時期の作曲家の心情が、鏡に映る様に浮かび上がってくるのだ。イデオロギーに向かいあう音楽の、歓喜と絶望。
文:矢澤孝樹
(ぶらあぼ2023年12月号より)

【information】
SACD『ショスタコーヴィチ:交響曲第2番 他/アンドリス・ネルソンス&ボストン響』

ショスタコーヴィチ:交響曲第2番「10月革命に捧ぐ」、同第3番「メーデー」、同第12番「1917年」、同第13番「バビ・ヤール」

アンドリス・ネルソンス(指揮)
ボストン交響楽団
マティアス・ゲルネ(バスバリトン)
タングルウッド祝祭合唱団
ニュー・イングランド音楽院合唱団

収録:2019年11月、ボストン(ライブ) 他
ユニバーサル ミュージック
UCGG-9216/8(3枚組) ¥7500(税込)