プラチナ・シリーズ第3回 OKI DUB AINU BAND
~欧米で喝采を浴びるアイヌルーツミュージック~

異色のアイヌ・バンドと伝統あるホールの共鳴

OKI DUB AINU BAND

 東京文化会館の小ホールで開催される人気の「プラチナ・シリーズ」には、クラシックの一流アーティストのほかにも、小野リサ(2020年度)、小曽根真(21年度)、ゴンサロ・ルバルカバ(22年度)など、ジャズやワールド・ミュージックといった多彩なフィールドで活躍するアーティストが出演してきた。なかでも今年11月に出演する「OKI DUB AINU BAND」は、ひときわ異彩を放っている。

 OKI DUB AINU BANDは樺太アイヌの伝統弦楽器である「トンコリ」の奏者、OKIが率いるバンド。2006年の結成以降、世界最大規模のワールド・ミュージックの祭典「WOMAD」をはじめ、海外の音楽フェスに多数出演し、高く評価されてきた。

 トンコリは細長いボディに5本の弦が張られた素朴な楽器で、すべて開放弦のため、ギターのようにフレットをおさえて音程を変化させることはできない。つまり5つの音しか出ないのだが、それゆえに同じフレーズをひたすら繰り返すミニマル・ミュージックのような陶酔感と高揚感をもたらす。さらに本来のトンコリの音量はとても小さいため、OKI DUB AINU BANDのトンコリはエレクトリックに「魔改造」され、ドラムやベース、ヴォーカルと一体となり、「ダブ・バンド」として現代に生きる我々を熱狂させている。

 プログラムは当日発表とのことだが、素晴らしい音響を誇るホールで彼らのライブが聴けるのは貴重な機会。小ホールのモダンな空間とアイヌの伝統に根差した革新的な音楽が、どのように響き合うのか楽しみだ。
文:原 典子
(ぶらあぼ2023年8月号より)

2023.11/11(土)18:00 東京文化会館(小)
問:東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 
https://www.t-bunka.jp