コリン・カリー・グループ ライヒ《18人の音楽家のための音楽》

聴き手の感性を刺激する衝撃のミニマル体験ふたたび!

 一切の誇張なくこの20年間に足を運んだ公演の中で、最も忘れ難いもののひとつが、2012年12月に東京オペラシティで聴いた、イギリス人打楽器奏者コリン・カリー率いるコリン・カリー・グループだ。普段はクラシックを聴かないであろう客層がホールを埋め尽くし、ポール・マッカートニーやマドンナを出迎えるかのような熱狂で来日したスティーヴ・ライヒに喝采を送った光景がとても感動的だったのだ。

 もちろんその時のカリーたちの演奏も衝撃的。それまでライヒの大編成アンサンブル作品といえば自作自演の後、現代音楽のスペシャリストたちが取り組むことでより精密な演奏を聴かせるようになったが、むしろコリン・カリー・グループはライヒの音楽から積極的にエモーショナルな要素を引き出していく。以前ならグラデーションのように少しずつ変わるのが良しとされたが、彼らは時に大胆なコントラストを取り入れるのだ。ミニマル・ミュージックが単調でつまらないものだと誤解している人がコリン・カリーによるライヒを聴けば、必ずや驚くに違いない。

 ライヒ本人こそ来日しないが、プログラムも理想的だ。ライヒが念願のピューリッツァー賞音楽部門を初めて手にした「ダブル・セクステット」を、事前録音+六重奏ではなく12人で生演奏。そして最新作のひとつ「トラベラーズ・プレイヤー」は、ベートーヴェンやマーラーが晩年に手掛けた緩徐楽章に通じる深遠な音楽で日本初演される。そして日本では15年ぶりに演奏されるライヒの代表作「18人の音楽家のための音楽」を新時代の解釈で聴けるのだから文句なしだ。
文:小室敬幸
(ぶらあぼ2023年4月号より)

2023.4/21(金)19:00、4/22(土)15:00 東京オペラシティ コンサートホール
問 :東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 
https://www.operacity.jp
※ライヒ本人は出演しません