訃報:中山悌一

 声楽家団体「二期会」創立者で現・東京二期会顧問の中山悌一(なかやま ていいち/バリトン)氏が9月29日に老衰のため亡くなった。享年89歳。1941年に東京音楽学校(現東京芸術大学)で木下保やネトケ・レーヴェに師事。卒業後、1952年に三宅春惠や柴田睦陸らと共に声楽家団体「二期会」を結成した。この年に渡独、ミュンヘン音楽大学にて往年の名歌手ゲルハルト・ヒッシュの薫陶を受けた。1956年に帰国し、リサイタル活動を開始。ドイツ・リート歌手としての活動は目覚しく、シューベルトの「冬の旅」全曲演奏会は100回以上にも上る。1979年から1998年まで二期会オペラ総監督として活躍したが、この間にワーグナーの楽劇の日本初演、また《フィガロの結婚》をはじめとするモーツァルトのいくつかのオペラ、《ナクソス島のアリアドネ》《マクベス》などの訳詞上演を行うなど、日本のオペラ史にもたらした功績ははかり知れぬものがある。教育活動にも尽力し、東京芸術大学教授と武庫川女子大学教授を歴任した。1983年に紫綬褒章、1991年に勲三等瑞宝章を受章している。