ルネサンスから現代に至る400年間に登場した様々なフルートを使い、時空を超えたレパートリーを披露する名手・有田正広。今回は18世紀のパリへと飛び、当時の大スター、27歳の「ジャン・ダリトウ」に扮して、フィリドールやオトテール、ルクレール、大クープランらの佳品に触れてゆく。有田の自作を含めた、2つのオトテールのレプリカを使用。低めのピッチ(a=400Hz)が落ち着きを与え、より人の声へと近づける。その演奏は、時に音程の不安定さをも音楽に採り込み、まさに変幻自在。千代子夫人との連携も絶妙。端正でありつつ、随所に盛り込まれた創意が、ウィットやエスプリをもたらす。
文:寺西肇
(ぶらあぼ2022年9月号より)
【information】
CD『フルート音楽で巡る 18世紀、パリの風景/有田正広』
オトテール:「プレリュードの技法 op.7」より〈フルートと通奏低音のためのプレリュード ホ短調〉/ルクレール:「ヴァイオリンまたはフルートのためのソナタ集 第2巻」より〈フルートと通奏低音のためのソナタ ホ短調〉/クープラン:「王宮のコンセール」より〈フルートと通奏低音のためのコンセール 第1番 ト長調〉 他
有田正広(フルート)
有田千代子(チェンバロ)
日本コロムビア
COCQ-85586 ¥3520(税込)