日本人唯一のキャリアと最高クラスの妙技を聴く
プロ楽団の金管楽器奏者、ましてや定員が通常1名のテューバ奏者は大変な狭き門。そんな中、アメリカ五大オーケストラのクリーヴランド管弦楽団のテューバ奏者として活躍するのが杉山康人だ。彼は、新日本フィル等を経て、2003年アジア人では初めてウィーン国立歌劇場管に入団し、ウィーン・フィルにも在籍後、05年クリーヴランド管に入団。以来現在まで金管王国の一翼を担っている。これ実は海外メジャー・オーケストラの同楽器では日本人唯一の快挙で、凄さは小澤征爾やイチロー級と言っていい。その彼が8月、トロンボーンのマッシモ・ラ・ローサとスペシャルコンサートを開催する。
ラ・ローサは、フェニーチェ歌劇場の第一奏者を経て、07年から18年までクリーヴランド管の首席奏者を務めた、杉山の元同僚。サイトウ・キネン・オーケストラにも杉山共々たびたび参加し、現在は地元イタリアを拠点に多彩な活動を行っている。杉山が「心から音楽を表現する」と賞賛するラ・ローサの演奏も要注目。加えてピアノがベルリン芸術大学などの管楽器科をコレペティトールとして支える沢野智子ゆえに態勢は万全だ。
今回は、杉山が歌心溢れるシューマンの2つのキャラクター・ピース、ラ・ローサがグレンダールやボザ等の定番曲で豊麗なソロを聴かせた後、二人でモーツァルトのバスーンとチェロのためのソナタ、クリーヴランドのジャズ・サックス奏者スミスと新日本フィルのトロンボーン奏者・山口尚人の新曲を披露。世界クラスのソロと興味津々のブレンドや音の会話をまとめて堪能させる。本公演は、金管愛好家以外の方も、耳新たな響きを味わう絶好の機会だ。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2022年8月号より)
2022.8/1(月)19:00 トッパンホール
問:ヒラサ・オフィス03-5727-8830
http://www.hirasaoffice06.com