東京国際ヴィオラコンクールで湯浅江美子が第2位

 第5回東京国際ヴィオラコンクールが5月26日から6月3日まで開催され、3日におこなわれたファイナルの結果、韓国のハヤン・パクが第1位、湯浅江美子が第2位、フランスのサオ・スレーズ・ラリヴィエールが第3位に入賞した。

左より:サオ・スレーズ・ラリヴィエール、ハヤン・パク、湯浅江美子
撮影:藤本史昭 写真提供:東京国際ヴィオラコンクール実行委員会

 同コンクールは、1992年、ヴィオラ奏者・今井信子の提唱により誕生したヴィオラの祭典「ヴィオラスペース」の一環として、2009年に創設。アジア唯一のヴィオラ単独の国際コンクールとして、3年に一度実施されている。今回は、コロナの影響による昨年からの延期を経て​行われ、23の国と地域から過去最多となる109名の応募が集まり、予備審査により選出された30名が第1審査に出場。12名が第2審査に選出し、さらに6名がセミ・ファイナルに進出。
 審査委員長はアントワン・タメスティ、副審査委員長は今井信子が務め、そのほかウィリアム・コールマン、原田幸一郎(ヴァイオリン/指揮)、コンクール委嘱作品を作曲した西村朗らが審査にあたった。
 最終結果は以下の通り。

ヴィオラスペース2022 vol.30
第5回 東京国際ヴィオラコンクール

第1位 ハヤン・パク Hayang Park(韓国)
第2位 湯浅江美子 Emiko Yuasa(日本)
第3位 サオ・スレーズ・ラリヴィエール Sào Soulez Larivière(フランス)

特別賞
名古屋フィルハーモニー交響楽団賞:ハヤン・パク
弓賞:湯浅江美子
弓賞:サオ・スレーズ・ラリヴィエール
弓賞:サオ・スレーズ・ラリヴィエール
(第2次審査において西村朗による委嘱新作の優れた演奏をした出場者に贈呈)
バロック弓賞:サオ・スレーズ・ラリヴィエール
聴衆賞:湯浅江美子
サントリー芸術財団賞:湯浅江美子

湯浅江美子
撮影:藤本史昭 写真提供:東京国際ヴィオラコンクール実行委員会

 日本人唯一の入賞を果たした湯浅は、桐朋女子高等学校音楽科を経て、桐朋学園大学卒業(ヴァイオリン専攻、ヴィオラ副専攻)。ミュンヘン音楽演劇大学ヴィオラ科において学士および修士を首席で修了、現在、同大学室内楽科修士課程に在籍している。2020年、ブラームス国際コンクールで第3位入賞に続き、翌年には、ヒンデミット国際ヴィオラコンクールで優勝するなど、今後の活躍が期待されるヴィオラ奏者の一人。これまでにヴィオラを佐々木亮、ハリオルフ・シュリヒティヒに師事。また、本コンクールで審査にあたった今井信子、アントワン・タメスティ、ラーシュ・アンネルシュ・トムテル、ウィリアム・コールマンらにも指導を受けている。

 6月4日におこなわれた記者会見および授賞式には、入賞者3名をはじめ審査委員らが出席。タメスティは、「若いコンテスタント一人ひとりが独自の音楽性を披露してくれ、印象深い演奏をたくさん聴くことができました。今井先生が開いてくださったヴィオラの世界を、若い世代へと繋いでいくこと、そして一人ではなく、集まって共に奏でていくことが大切なのです」と述べた。

手前 左:ハヤン・パク 右:アントワン・タメスティ(審査委員長)
撮影:藤本史昭 写真提供:東京国際ヴィオラコンクール実行委員会

 続いて湯浅は、以下のようにコメントした。
「私にとってヴィオラスペースは特別なもので、第3回が開催された時に、初めてヴィオラの国際コンクールを生で見ました。その頃、ヴィオラを始めようと思っていた時期で、『ここにいつか立つことができるのかな…』と自分にとっては遠い舞台を見ているような気持ちでした。今回コンクールに参加して、ホームのようであると同時に大きな舞台にも思える場所です。他の人との比較ではなく、今までやってきたことを試される、“自分への挑戦”の舞台でした」

 同日に開催された入賞記念コンサートでは、パクがブリテン「無伴奏組曲第1番」(今井信子編曲)、湯浅が野平一郎「戸外にて〜ヴィオラ・ソロのための」(ヴィオラスペース2004委嘱作品)、スレーズ・ラリヴィエールが西村朗「ヴィオラのための〈アムリタ〉」(第5回 東京国際ヴィオラコンクール委嘱作品)などをそれぞれ披露した。
 入賞者は、2023年または2024年の「ヴィオラスペース」への出演が予定されている。

入賞者および審査委員
撮影:藤本史昭 写真提供:東京国際ヴィオラコンクール実行委員会

Tokyo International Viola Competition
https://tivc.jp