「音楽は、常に“生きて”いなくてはなりません」と、ペーター=ルーカス・グラーフは言う。90歳を過ぎて、なお現役を続けるフルート界のレジェンド。ちょうど90歳となった2019年8月に神奈川で開いたリサイタルのライブ録音は、みなぎる覇気と瑞々しさで、第1音から魂を掴まれるかのよう。凛とした気品を纏ったヘンデル、幽玄の霞のごときイベールの無伴奏、憧れの気持ちを訴えかけるモーツァルト2世の旋律、明暗が交錯するマルティヌー…。「様々なスタイルの提示も、自分の目的の一つ」との名匠の言葉通り、バロックから現代に至る多彩な作品が、変幻自在に吹きこなされてゆく。
文:寺西肇
(ぶらあぼ2022年6月号より)
【information】
CD『レジェンド・イン・フルート/ペーター=ルーカス・グラーフ』
ヘンデル:ソナタ ハ長調/イベール:小品(無伴奏フルートのための)/ヒンデミット:フルート・ソナタ/F.X.モーツァルト:ロンド ホ短調/ジョリヴェ:「5つの呪文」より〈D.生命と天地の穏やかな合致のために〉/マルティヌー:ファースト・ソナタ H.306
ペーター=ルーカス・グラーフ(フルート)
田原さえ(ピアノ)
収録:2019年8月、昭和音楽大学ユリホール(ライブ)
マイスター・ミュージック
MM-4506 ¥3300(税込)