2022年9月の海外公演情報

Wiener Staatsoper Photo by Dimitry Anikin on Unsplash

『ぶらあぼ』誌面でご好評いただいている海外公演情報を「ぶらあぼONLINE」でもご紹介します。海外にはなかなか出かけられない日々が続きますが、“妄想トラベル”を楽しみましょう!
[以下、ぶらあぼ2022年6月号海外公演情報ページ掲載の情報です]

曽雌裕一 編

↓それぞれの国の情報はこちらから↓

 9月には定番の音楽祭イベントが毎年多数開催される。具体的には「リンツ国際ブルックナー・フェスティバル」、「ムジークフェスト・ベルリン」、「ブレーメン音楽祭」、「ボン・ベートーヴェン音楽祭」、「ルツェルン音楽祭(9月分)」、「プロムス」、「ドヴォルザーク・プラハ国際音楽祭」など。これらは主としてオーケストラに重点を置いた音楽祭だが、中には新シーズンの開幕演奏会を実質的にこのイベントの中で開始するオケもある。また、音楽祭を渡り歩いてのツアー公演も珍しくない。今年は、前者ではラトル=ロンドン響、ティーレマン=シュターツカペレ・ドレスデン、後者ではウェルザー=メスト指揮クリーヴランド管、ネゼ=セガン指揮フィラデルフィア管といったアメリカのオーケストラのヨーロッパツアーなどが典型的。「ムジークフェスト・ベルリン」の中で行われるペトレンコ=ベルリン・フィルの演奏会ではダッラピッコラの「囚われ人」が取り上げられるのも注目だが、クセナキスやB.A.ツィンマーマンの作品を取り上げていることにより、新シーズンのベルリン・フィルでのペトレンコのスタンスが垣間見える。2022/23シーズンではペトレンコは、上記の他、A.ノーマン、リゲティ、スルンカ、J.ウルフ、L.シュトレイクといった現代作曲家の作品も取り上げている。現代曲も振れる指揮者としてイメージの幅を広げようとしているのか、なかなか興味深い。

 ベルリン・フィルでは、ペトレンコの他にヤノフスキ指揮、アムランのピアノ独奏によるレーガーのピアノ協奏曲も要注目。ピアノ協奏曲という点では、レヴィットの独奏、パッパーノ指揮ローマ・サンタ・チェチーリア国立管のブゾーニのピアノ協奏曲(ムジークフェスト・ベルリン)も重要。一方のウィーン・フィルでは、「ルツェルン音楽祭」でのサロネン指揮のメシアン「トゥーランガリラ交響曲」(パリ管とも同曲を演奏)や、ウィーンのムジークフェラインとコンツェルトハウスの両方で行われるメータ指揮のシューマンのピアノ協奏曲(独奏はアルゲリッチ)とブルックナーの交響曲第4番も大いに興味をそそられる。他には、ロト指揮ケルン・ギュルツェニヒ管のブルックナー交響曲第3番の第1稿、同じロト指揮レ・シエクルのストラヴィンスキー三大バレエ音楽集(シャンゼリゼ劇場)、バイロイト音楽祭で期間最後に行われるネルソンス指揮のコンサートなども見落とせない。若手指揮者のマケラもコンセルトヘボウ管(ムジークフェスト・ベルリン)やパリ管に引っ張りだこ。8月中の公演だが、ケント・ナガノがハンブルク・フィルで演奏するブラームス「ドイツ・レクイエム」はブレーメン初稿と銘打たれている。

 オペラでは、まずはケルン歌劇場のベルリオーズ「トロイアの人々」プレミエ(ロト指揮)。コロナ蔓延期には企画そのものが難しかったであろう大規模作品だが、もはや普通にスケジュールに載るようになってきた。ウィーン国立歌劇場とジュネーヴ大劇場で新シーズン開始がアレヴィ「ユダヤの女」で競合するというのも興味深い。前者ではアラーニャやヨンチェヴァの出演、後者ではミンコフスキの指揮が注目を呼ぶ。エッセン歌劇場のワーグナー「タンホイザー」(ネトピル指揮)、チューリヒ歌劇場の同「ワルキューレ」(ノセダ指揮)、パリ・オペラ・コミークのドリーブ「ラクメ」(ドゥヴィエル主演、ピション指揮)、ヘンゲルブロック指揮のグルック「オルフェオとエウリディーチェ」(シャンゼリゼ劇場)、演奏会形式ながらティチアーティ=ベルリン・ドイツ響で演奏されるスマイス「難破船略奪者(The Wreckers)」も要注目。ウィーン・フォルクスオーパー管やケルンのフィルハーモニーに出演する五嶋みどりや、イザベル・ファウストとメルニコフによるヴァイオリン・リサイタル、エベーヌ弦楽四重奏団の活躍する「ボン・ベートーヴェン音楽祭」も面白い。
(曽雌裕一・そしひろかず)

(コメントできなかった注目公演も多いので本文の◎印をご参照下さい)