東京フィルハーモニー交響楽団 ハートフル コンサート2014

平和への祈りを音楽に託して


 8月15日は終戦記念日だが、東京フィルは今年もこの日に平和を願い、楽団副理事長の黒柳徹子と『ハートフル コンサート』と題したトーク&コンサートを開く。すでにご存じの方も多いと思うが、黒柳の父は元N響のコンマスまで務めた人物で、彼女自身も音楽一家に育ち声楽を学んだ。軽快で滑らかなトークは80歳を超えた今も健在だが、あのリズミカルな語り口にはどこか音楽的な心地よさがあるようにも思う。
 黒柳はまた長年ユニセフの親善大使として、恵まれない子供たちが暮らす場所に毎年のように出かけ、現地の状況を世界に知らせる活動を続けている。昨年は長い内戦に苦しむ南スーダンに出かけたという。かつては日本でも戦争によって多くの尊い命が失われたが、まだ世界には混迷に包まれた地域がたくさんあるのだ。
 そうしたことを頭のどこかに置きつつ、平和に感謝しながらクラシック音楽に耳を傾ける『ハートフル コンサート』も今年で25周年。こういう企画は長く続けてこそ意義がある。区切りの年に登場するのは黒柳と同世代の外山雄三だ。黒柳ともゆかりの深いN響を外山は若い頃から振り、また以前はテレビで冠番組を持っていたほどトークもうまい。身内に音楽家の多い黒柳のこと、大ベテランを相手に昔話に花が咲きそうだ。音楽は外山の指揮で《魔弾の射手》序曲に始まり、「時の踊り」(《ジョコンダ》より)、《マドンナの宝石》より間奏曲、ワルツ「金と銀」など、肩の凝らないライトな選曲となっている。「ボレロ」(ラヴェル)ではオーケストラの華麗なサウンドも堪能できるだろう。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年8月号から)

8/15(金)18:30 東京芸術劇場コンサートホール
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522 
http://www.tpo.or.jp