金子三勇士(ピアノ)

ハンガリー人的な“熱い”演奏になりそうです!

(C)K.Miura

(C)K.Miura

 ハンガリー人の母、日本人の父のもとに生まれた金子三勇士。6歳からハンガリーに渡り、祖父母のもとで暮らしながらリスト音楽院で学んだ。そんな金子にとって夢のような舞台が実現する。尊敬するゾルタン・コチシュの指揮するハンガリー国立フィルとの共演で、リストのピアノ協奏曲第1番を演奏するのだ。
「僕が音楽に目覚めたのは2歳の頃で、コチシュさんが弾くバルトークの『子どものために』というピアノ曲のCDを聴いたことがきっかけでした。祖母がプレゼントしてくれたそのCDを楽譜が読めないうちから聴き込み、ほぼ全曲弾けるようになりました。今の僕があるのは、コチシュさんのおかげといっても過言ではありません。2008年にバルトーク国際コンクールで優勝した時、祝賀の席にサプライズ・ゲストとしてお越し下さったので、積年の感謝の想いをお伝えしました。普段はシャイなマエストロが、嬉しそうな笑みを浮かべられたのがとても印象的でしたね。共演は今回が初めてなので、今から歓びと期待で胸がいっぱいです」
 16歳まで暮らしたハンガリーでは、国営ラジオや演奏会を通じて日常的にハンガリー国立フィルの演奏に親しんできた。
「とにかく“熱い響き”が特徴のオーケストラです。ハンガリー人の国民性は日本人と共通する面があり、お人好しで、怒りや辛さをあまり表に出しません。それがひとたび音楽となると、溜め込んだエネルギーを爆発させ、独特なリズム感の中で熱い表現をします。マエストロ・コチシュもブレーキを外したような爆発的演奏が得意。ちなみに僕自身は、日本にいる時とハンガリーにいる時とでは、“まったく別人”と言われることがあります。どうやら表情や身振りや話し方などが変わるそうです。今回は日本にいながらにして、ハンガリー人的な“熱い”演奏になるのではないかと楽しみです」
 華やかな技巧と柔らかな表現をあわせ持つリストの協奏曲第1番、その聴きどころは?
「リストが生涯にわたり改訂を続けた作品ですが、全体的には若いエネルギーに満ちています。ドラマティックな冒頭から勝負ですね(笑)。しかし、どんなに超絶技巧が激しくても、それらにはちゃんと意志と意味がある。華やかさも大事ですが、きちんとドラマを伝えたいです」
 ハンガリー人の父とドイツ人の母の間に生まれたリスト。二つの血統を継ぐ者として、リストに対する金子の興味は尽きない。
「リストはひと言でいうならグローバル人。女性ファンを熱狂させたピアニストとして活動していたのはほんの2年間です。彼は学校を設立し、研究に携わり、外交やチャリティー活動にも尽力しました。また宗教家、哲学者などの多面的な顔を持っています。そんなリストの弟子の系譜に連なる一人として、彼の人間像に迫る演奏と研究を続けていきたいです」
 このように語る金子だが、実際にリスト音楽院での教師はリストの弟子に直結している。今春には東京音大の修士号を取得したばかり。金子自身のグローバルな活動の一つとしても、今回の舞台は夢と希望に満ちている。
取材・文:飯田有抄
(ぶらあぼ2014年6月号から)

ゾルタン・コチシュ(指揮) ハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団
共演:金子三勇士(ピアノ) 
★6月23日(月)・サントリーホール Lコード:38691
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
http://www.japanarts.co.jp

他公演 
6/27(金)・奈良県文化会館国際ホール Lコード:53593
問:奈良県文化情報センター0742-22-0200
※ハンガリー国立フィル日本ツアーの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。