2022年2月の海外公演情報

Musikverein

『ぶらあぼ』誌面でご好評いただいている海外公演情報を「ぶらあぼONLINE」でもご紹介します。海外にはなかなか出かけられない日々が続きますが、“妄想トラベル”を楽しみましょう!
[以下、ぶらあぼ11月号海外公演情報ページ掲載の情報です]

曽雌裕一 編

【ご注意】
 新型コロナウイルス感染の影響により、本欄に掲載した音楽祭や劇場等の公演予定について、今後、重大な変更や中止・延期等の措置が施されて実際の公演内容と異なってしまう可能性も十分あり得ます。その点をご留意いただき、最新情報は必ず各音楽祭・劇場等のウェブサイトでご確認いただきますようお願いいたします。

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 コロナ禍にあっても、上演の環境はだいぶ以前の状態に戻ってきた…とお考えの向きもあろうが、オペラにしてもオケにしても、人手や予算のかかる出し物が手控えられているのは隠しようのない事実。例えば、2018年から19年にウィーンとパリで競合したベルリオーズの大作「トロイアの人々」プレミエなどといった破格の演目に再会できるのは、まあ来シーズン以降ということになるのだろう。

 そんな中、ケルン・ギュルツェニヒ管がロトの指揮のもと、演奏会用ホールで演出付上演(ビエイト演出)を試みるB.A.ツィンマーマンの「軍人たち」などは、どこまで手の込んだ鮮烈な舞台が作り上げられるのか、これは興味津々だ。また、同じロトが取り上げる、無声映画「メトロポリス」のためにM.マタロンが作曲したリブーテッド版の音楽も、衝撃的な音響に満たされそうな予感を抱かせる。

 現代曲の話題を取り上げた流れで紹介するのは、フランス国立管やフランス国立放送フィルが「フェスティバル・プレサンス」の名のもとに演奏する現代音楽の企画公演。この手の音楽に全く興味のない方には無用の注目印かもしれないが、よく知られたミュライユを中心に据えた興味深い印象は受ける。

 逆に古楽系の公演では、アン・デア・ウィーン劇場(演奏会形式)でのモンテヴェルディ「オルフェオ」(ビオンディ指揮)とヴィヴァルディ「オリンピーアデ」(スピノージ指揮/シャンゼリゼ劇場でも公演あり)、「ザルツブルク・モーツァルト週間」での「羊飼いの王様」(プルハー指揮ラルペッジャータ)、ヘンゲルブロック=バルタザール・ノイマン・アンサンブルのバッハ「ロ短調ミサ」ツアー、ジュネーブ大劇場のリュリ「アティス」(バレエ振付のレジェンド、プレルジョカージュによる演出・振付)、フィルハーモニー・ド・パリでのピション指揮ピグマリオン演奏の3夜にわたるバッハ作品集(クリスマス・オラトリオ、ヨハネ受難曲、復活祭・昇天祭オラトリオ他)、同じピション指揮になるルネサンス期の素材と現代作曲家ギボンズとのコラボレーション企画(オランダ国立オペラ)あたりが要注目公演。

 オペラで特徴的なのは、ヤナーチェク作品の競合。アン・デア・ウィーン劇場で「イェヌーファ」、ベルリン州立歌劇場で「マクロプーロス事件」(ラトル指揮)のプレミエが出る。1月からの継続公演ではバイエルン州立歌劇場の「利口な牝狐の物語」(コスキー演出)もあり、どれも注目公演。ブリテンの「ピーター・グライムズ」がウィーン国立歌劇場(カウフマン、ダヴィドセン出演)とバイエルン州立歌劇場(ヘアハイム演出)のドイツ語圏大劇場で重複するというのも珍しい。特に来年はブリテンのメモリアル・イヤーというわけでもないのに。珍しいと言えば、ミラノ・スカラ座でのプレミエ2作がマスネの「タイス」(フランス・オペラ)とチャイコフスキーの「スペードの女王」(ロシア・オペラ)というのも面白い。特に前者を指揮するヴィオッティはもっと評価が高まっても良さそうな才人と聴くたびに思う。ちなみにヴィオッティはスカラ・フィルのコンサートにも登場する。また、ベルリン州立歌劇場に出演するラトルは、シュターツカペレ・ベルリンと共にシューマン「楽園とペリ」という渋いオラトリオも演奏する。

 オーケストラでは、フェスティバル「不安の時代−アメリカの旅」と銘打ってコープランドやアイヴズに焦点を当てたNDRエルプフィルの企画公演もあるが、指揮者的には、ソヒエフ指揮のミュンヘン・フィル、カリーディス指揮のバイエルン放送響とコンセルトヘボウ管、マケラ指揮のパリ管とロンドン・フィルあたりの方が興味をそそる。ピアノでは、フィルハーモニー・ド・パリで、ピリスが下野竜也指揮グルベンキアン管とショパンの協奏曲第2番、デュメイ、ジャン・ワンと組んでブラームス、ベートーヴェンの室内楽を演奏。そしてソロ・リサイタルも開催する。
(曽雌裕一・そしひろかず)

(コメントできなかった注目公演も多いので本文の◎印をご参照下さい)