ローマ歌劇場2014日本公演が、5月20日(火)、《ナブッコ》(ヴェルディ)で開幕する。オペラ史上に輝く名作の数々が上演されてきたローマ歌劇場だが、今回は2010年より同歌劇場の終身名誉指揮者のポストにあるリッカルド・ムーティとの来日ということで大きな話題となっている。公演に先立ち、5月19日(月)、都内のホテルで記者会見が行われた。出席したのは、リッカルド・ムーティのほか、カルロ・フォルテス(同歌劇場総裁)、アレッシオ・ウラッド(同歌劇場芸術監督)、高橋典夫(NBS事務局長)。通訳は、田口道子が務めた。会見ではマエストロ、ムーティが雄弁に語り、以下、その抜粋。
ムーティは、まず、今回のキャスティングについて「若い歌い手を揃えたが、多くはすでにMETやスカラ座で活躍している本当に素晴らしい実力の持ち主ばかり」と、水準の高さを強調した。
続いて、現代のヴェルディの受容についての問題点に関して力説する。
「モーツァルトやリヒャルト・シュトラウスなどに比べると、彼の芸術性への尊敬の念が薄いように感じる。モーツァルトやワーグナーでは聴衆は真面目になるのに、ヴェルディではまるで、単に“イタリア的な愉悦”だけに浸っている聴衆が多い。ヴェルディ芸術の真髄が理解されるのはまだ先のことだ」と語った。
さらに、ヴェルディのオペラでは「全体の音楽性よりも、歌手たちの技巧の誇示ばかりに関心が集まる、悪しき習慣がまだある」と指摘し、「指揮者も歌手も楽譜に何も加えずに演奏してほしい」という、作曲家自身の書簡にある言葉を引用しながら、ヴェルディの楽譜に忠実な演奏の重要性を説いた。
演出についても「ヴェルディのオペラは音楽と言葉の緊密な関係性において、すでに演出法がどうあるべきかが示唆されている。音楽的意図を妨げるような演出に対して彼は反対だった」と述べ、現代的な演出ではときにヴェルディの素晴らしい音楽が「まるで映画のBGMのように扱われる」情況を批判した。今回の2演目での演出については「非常に詩的なストーリーを物語っていくような手法を取っている。“伝統的な”演出ではないが、音楽的なドラマを感じてもらえるものと思う」と自信を込めて語った。
今回は《ナブッコ》と《シモン・ボッカネグラ》という傑作2本を携えてきたムーティだが「現在、消えつつある“作品に対する忠誠心と尊厳”というものを、もう一度皆さんにお観せしたい。今後もヴェルディの真実を伝えるために前進していきたい」と真摯に語った。
ローマ歌劇場 2014日本公演 公演日程
《ナブッコ》
作曲:ジュゼッペ・ヴェルディ
演出:ジャン=ポール・スカルピッタ
指揮:リッカルド・ムーティ
〈公演日〉
5月20日(火)18:30 東京文化会館
5月30日(金)15:00 NHKホール
6月 1日(日)15:00 NHKホール
《シモン・ボッカネグラ》
作曲:ジュゼッペ・ヴェルディ
演出:エイドリアン・ノーブル
指揮:リッカルド・ムーティ
〈公演日〉
5月25日(日)15:00 東京文化会館
5月27日(火)18:30 東京文化会館
5月31日(土)15:00 東京文化会館
問:NBSチケットセンター 03-3791-8888
http://www.nbs.or.jp