“ヤマカズ”の魅力満開のプログラム
2009年のブザンソン指揮者コンクール優勝後、「21世紀のヤマカズ」というキャッチフレーズにはおさまらないのではないかと思えるほど、山田和樹は世界的なキャリアを足早に駆け上っている。その魅力を解析してみよう。まずオーケストラを短時間で自分の色に染め上げる力。山田が振ると角がとれた柔らかい音が出てくる。スイス・ロマンド管が彼を首席客演指揮者に抜擢したのも、このセンスがフランス語圏の好みにあっているからではないか。次に古典から現代までを網羅するレパートリーの幅広さ。耳の良さはピカイチで、複雑な無調作品でも見事に切り分ける。難しい曲になるほど闘志が燃え上がるらしく、時に炎のような激しいバトンテクニックを見せる。意外な選曲で聴きなれた曲の新しい“食べ合わせ”を提案したり、知られざる名曲を愉しく聴かせるプログラミングの妙にも注目したい。
4月の日本フィル定期は山田の長所が満開になりそうだ。『永遠の煌めき』というタイトルのもと、不死鳥伝説を描いた「火の鳥」全曲(ストラヴィンスキー)とニールセンの「不滅」が取り上げられるが、両曲ともに20世紀初頭に書かれている。「火の鳥」では山田の色彩感と耳の良さが存分に発揮されるだろう。一方、ニールセンの「不滅」は第一次大戦の不穏な気分を反映してか、調性が安定せず時に無調を思わせるが、最終部では2人のティンパニ奏者が協奏しダイナミックなクライマックスを迎える。この辺りでヤマカズはソフトな顔をかなぐり捨て、燃え上がる闘志をむき出しにしてくれるのではないか。ノリのよい日本フィルが、どう応えるかも見所だ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2014年4月号から)
第659回 東京定期演奏会
★4月25日(金)、26日(土)・サントリーホール Lコード:39173
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911
http://www.japanphil.or.jp