結成四半世紀を超えるクァルテット・エクセルシオのベートーヴェン・シリーズ第5弾。第14番は極めて美しい仕上がりだ。冒頭のフーガから繊細な声部の綾がとてもきれい。とりわけ声部を減らした中間部の透明感は比類がない。第2楽章ロンドは、天使が浮遊して飛び跳ねるかのよう。第4楽章は巨大な中心楽章に相応しい見事な出来。次から次へと変幻自在な変奏が紡がれる。生き生きと躍動するスケルツォ、デリケートな表情が光るアダージョ、激しい前進駆動と滑らかな抒情の対比も鮮やかなフィナーレまで、極上の演奏を楽しめる。「ハープ」も爽やかで味のある表現が随所で聴かれる。
文:横原千史
(ぶらあぼ2021年5月号より)
【information】
CD『ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第10番「ハープ」&第14番/クァルテット・エクセルシオ』
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第10番「ハープ」、第14番
クァルテット・エクセルシオ
【西野ゆか 北見春菜(以上ヴァイオリン) 吉田有紀子(ヴィオラ) 大友肇(チェロ)】
ナミ・レコード
WWCC-7939 ¥2750(税込)