王道プログラムで知る人気音楽家の表現者としての深まり
ショパンのピアノ協奏曲第1番とチャイコフスキーの交響曲第5番…新日本フィルの2月の定期演奏会「ルビー」は、堂々たる王道プログラムだ。しかも指揮は大友直人、ピアノは牛田智大と人気アーティストが並ぶ。週末のマチネ公演なので、寛いだ気分で彼らが紡ぐ名曲に酔いしれれば充分ともいえるだろう。だが一歩踏み込めば、より深い楽しみが見えてくる。
大友は数々のポストを歴任してきた日本の中心的指揮者の一人。新日本フィルもデビュー直後から指揮し、昨年の「第九」など最近もたびたび客演して相性の良さを示している。2020年11月に続く定期演奏会登場も信頼の証し。まずは両者の熟成されたコンビネーションが聴きものとなる。また大友の特徴は緻密な構築と格調高い音楽。近年いっそう味わいを増した彼のノーブルな表現と濃密で情熱的なチャイコフスキーの5番とのマッチングが興味深く、曲の新たな魅力が創出されることへの期待も大きい。
12歳でユニバーサル ミュージックからCDデビューした俊才・牛田智大は、18年の浜松国際ピアノコンクールで第2位入賞。19年にはロシア・ナショナル管の現地公演に出演し、ワルシャワとブリュッセルでリサイタルを行うなど、世界水準の奏者に成長している。さらにショパンは、19年に『バラード第1番、24の前奏曲』のCDをリリースして以来、とりわけ傾注している作曲家。持ち味であるパッションを内包した抒情美に奥行きを加えた今の彼が弾く協奏曲にも多大な注目が集まる。
これは、名作を通して人気音楽家の“深まり”を知るコンサートでもある。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2020年12月号より)
定期演奏会 ルビー〈アフタヌーン コンサート・シリーズ〉第37回
2021.2/19(金)、2/20(土)各日14:00 すみだトリフォニーホール
2020.11/19(木)発売
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815
https://www.njp.or.jp