西 陽子 (箏) 静岡音楽館AOI 新春ランチタイム・コンサート

箏の音に寄り添って聴いてみたい


 「箏」という楽器への先入観を、根底から覆す体験となるかもしれない。
 古典はもとより、現代に生まれた作品も次々に紹介、美術家や詩人、ダンサーらともコラボレーションを展開するなど、先鋭的で国際的な演奏活動が煌めく西陽子。「日本の楽器は主張するよりも、あえて一歩引くことによって、聴く人を引き寄せる。つまり、聴き手の意識を呼び覚ますことができる。それが、日本の音楽の力」と主張する。新春に相応しく、古典の名曲である八橋検校「六段の調」で幕開けするステージ。しかし、現代音楽の開拓者・高橋悠治による「青森蛙」、彼女の師でもある沢井忠夫「鳥のように」、さらにリムスキー=コルサコフの作品からインスピレーションを得た自作「くまんばちの冒険」が披露されるに至っては、箏に広がる響きの世界の多彩さに、耳を奪われるに違いない。「箏の音は“木の声”。だから、人が楽器を支配するのではなく、人が楽器に寄り添う」と語る西。聴く者もまた、彼女の箏の音に寄り添ってみたい。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ2013年12月号から)

★2014年1月15日(水)・静岡音楽館AOI
問 静岡音楽館AOI 054-251-2200 
http://www.aoi.shizuoka-city.or.jp