新年の幕開けはイタリアにちなんだ作品で
上岡敏之と新日本フィルによる新年早々の定期演奏会は「イタリア」がテーマ。1曲目は昨年から続くシューベルト交響曲全曲シリーズのひとつ、交響曲第6番。シューベルトはイタリアとは縁が深い。宮廷楽長であったイタリア人のサリエリに作曲を学んだほか、当時ウィーンで大ブームを巻き起こしていたロッシーニから大きな影響を受け、この作品にもそれが表れていると言われる。
メンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」は、旅行先のローマで書き始められた。弾けるように勢いよく始まる第1楽章からは、イタリアの青い空や太陽、オリーブが実る緑の丘が目に浮かぶ。終楽章にはローマゆかりの舞曲サルタレロも使われている。
この2曲を結ぶのは、イタリアを代表する作曲家ヴェルディの歌劇《ドン・カルロ》から「王妃の舞踏会」。16世紀のスペイン王国を舞台にしたオペラで、王子ドン・カルロは、恋するフランス王女エリザベッタが、父親の国王フィリッポ2世の妃になったことに苦悩する。第3幕第1場、フィリッポ2世戴冠式の前日、祝典の場面でのバレエ音楽だが、実際の上演ではカットされることも多く、耳にする機会は少ない。こうした隠れた佳曲を取り上げる上岡のセンスは素晴らしい。
作品に常に新しい光を与えるマエストロ上岡の指揮に、ダイナミックかつ繊細な演奏で応える新日本フィル。両者がつくりだすイタリアにちなむ音楽は、輝かしい新年のスタートにふさわしい。
文:長谷川京介
(ぶらあぼ2019年12月号より)
第615回 定期演奏会 トパーズ〈トリフォニー・シリーズ〉
2020.1/17(金)19:15、1/18(土)14:00 すみだトリフォニーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815
https://www.njp.or.jp/