バッハ・コレギウム・ジャパンの演奏会をはじめ、バッハの受難曲などで、知的な名エヴァンゲリストぶりを披露している櫻田亮。ボローニャで学び、国際的な活躍を展開する。初のソロ・アルバムで対峙したのは、17世紀イタリアで流行した、簡素な伴奏を伴うモノディ様式の単声世俗歌曲。櫻田の美声は、リズムや旋律と密接に結びついた言葉ごと、その色彩をくるくると変えてゆく。弦を3列に張ったバロック・ハープの響きは煌びやかなモダンと違い、ギターのように芳醇で内省的。西山まりえは、尽きぬ憧れや届かぬ思いなど、櫻田の繊細な感情表現へぴたりと寄り添い、時に前に出て煽る場面も。
文:笹田和人
(ぶらあぼ2019年9月号より)
【information】
CD『あなたはすべて私のものだった/櫻田亮&西山まりえ』
カッチーニ:この上なく甘い溜息、私の美しいアマリッリよ、痛みと苦しみの狭間で、帰ってきておくれ 私の愛しい人よ/ディンディア:無慈悲なアマリッリ、獣も岩も私の嘆きに涙を流し/モンテヴェルディ:これほどに甘い苦しみが、優しい光で武装した太陽が、あの蔑むような眼差し、あなたはすべて私のものだった 他
櫻田亮(テノール)
西山まりえ(バロック・ハープ)
コジマ録音
ALCD-1188 ¥2800+税