能と西洋音楽の新たなる融合
「羽衣伝説」は、民話や童話などで多くの日本人が幼い頃から親しんできた物語であるだけでなく、室町時代から現代まで上演され続けている能の人気演目でもある。三保の松原の松の木に美しい羽衣がかかっていて、それをみつけた漁師の前に天女が現れ、「それは自分の羽衣だから返してほしい」というが漁師は返そうとしない。羽衣がないと天界へ帰れない天女は嘆き悲しみ、その姿を見た漁師は羽衣を返すことにする。天女はお礼に美しい舞を舞い、彼方の富士山から天へと帰っていくという話。
この羽衣伝説をもとに作曲家・加藤昌則が新たに曲を書き下ろし、能とヴァイオリンとソプラノが共演する舞台「はごろも〜銀座の飛翔」が、王子ホールで上演される。これは、日比谷・銀座・築地地区を一大芸術拠点として発展させようという「東京アート&ライブシティ構想」の一環として、共に銀座にある王子ホールと観世能楽堂が手を組んだ連携企画の第2弾。
観世流シテ方の武田宗典をはじめとする能楽師、ヴァイオリンはN響第1コンサートマスターの篠崎“まろ”史紀、ソプラノは東京二期会のプリマドンナ・森谷真理と、錚々たるメンバーが顔を揃えた。演出は、今日本でもっとも注目を浴びる演出家のひとり、田尾下哲が手がける。そのほか、王子ホールのロビーには書家の藤田雄大作品が展示されるなど、能、クラシック、書という複合的なアート空間を作り出す。ひと味もふた味も違った「銀座のアート」を楽しめる大人の一夜となりそうだ。
文:室田尚子
(ぶらあぼ2019年7月号より)
2019.7/23(火)18:00 王子ホール
問:東京アート&ライブシティ構想実行委員会事務局03-5909-3068
https://www.artandlive.net/