10年以上にわたる音楽監督任期延長が発表されたとき、ノットはキャリアの一番脂の乗った時期を東響と共に築こうとしているのだな、と思った。東響も熱意に応え、ノットが得意とする現代ものやドイツもので心に残る多くの成果を挙げた。いま、彼らはそこから踏み出して、広大なレパートリーを渉猟しようとしている。このラフマニノフをその狼煙と聴いた。たっぷりとしたサウンドが滔々とした流れを生む第1楽章や、むせ返るロマンを感じさせる第3楽章。第2楽章はパンチが効いていて、フィナーレは明るく輝かしい。どこにも力みがなく、細部まで整えられている。黄金時代到来を感じさせる快演だ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2019年5月号より)
【Information】
SACD『ラフマニノフ:交響曲第2番/ノット&東響』
ラフマニノフ:交響曲第2番
ジョナサン・ノット(指揮)
東京交響楽団
収録:2018年11月、サントリーホール(ライヴ)
オクタヴィア・レコード
OVCL-00691 ¥3200+税