若きヴィルトゥオーゾが挑むオール・リストと“3台ピアノ”!
阪田知樹は2016年フランツ・リスト国際ピアノコンクールでアジア人男性初の優勝者に輝き、世界の注目を集める新世代のヴィルトゥオーゾだ。「11度(ドからオクターブ上のファまで)の和音」が弾ける大きな手に恵まれた阪田が、得意のリスト作品によるリサイタルを2月に行う。
「75年の生涯を送ったリストの多面的な創作をご紹介しようと、3部構成のプログラムを組みました。人気の高い『ラ・カンパネッラ』は、通常よく演奏される1851年のバージョンと、もっと若い頃の1838年のバージョンの両方を弾きます。後者はあまりの超絶技巧に、アラウやホロヴィッツといった往年のピアニストたちも『演奏不可能』と語ったもの。『パガニーニによる超絶技巧練習曲』の第3番として収められていますが、同じ曲集から第4番『アルペジオ』も続けて演奏します。これはおそらくリストの全作品の中でもっとも難しい作品。録音も数少なく、生演奏はほとんどされない曲ですので、ぜひお聴きいただきたいです」
第2部は30分の大曲、ロ短調ソナタだ。数年前からレパートリーに加えたという阪田は「ベートーヴェン以降のソナタの伝統を受け継ぎながら、ロマン主義的なファンタジーを飛翔させた作品。ピアノ音楽史においても重要であり懐の深い曲」と捉える。
第3部では、歌曲やオペラをピアノ作品に編曲したリストにも光を当てる。
「 『歌劇《ノルマ》の回想』は、リスト国際コンクールで演奏し、審査員と聴衆が総立ちになって喝采してくださった思い入れのある曲です。マリア・カラスの名演の録音は、私自身の表現力の糧となり可能性を広げてくれました」
リストの「演奏スタイル・音楽語法・教育者としての側面を伝えることをライフワークとしていきたい」と言う阪田だが、作曲や即興演奏にも能力を発揮している。その一面を披露するのが、3月に行われる中野翔太、松永貴志と3台ピアノで共演する公演「ピアノ・トリオ・スペクタクル」だ。
「3台ピアノによるガーシュウィンの『ラプソディ・イン・ブルー』は、即興を大いに交えて演奏します。お二人との共演は初めてなので、どんな演奏となるのか楽しみです。中野さんとは2台ピアノでミヨーの『スカラムーシュ』も共演します。理屈抜きに幸せを感じられる大好きな作品です。ソロではリストの『愛の夢 第3番』やショパンの『バラード第1番』といった名曲も演奏しますので、多くの方に楽しんでいただきたいです」
取材・文:飯田有抄
(ぶらあぼ2019年1月号より)
阪田知樹 ピアノ・リサイタル リストへの誘い
2019.2/11(月・祝)13:00 横浜みなとみらいホール
中野翔太・松永貴志・阪田知樹 ピアノ・トリオ・スペクタクル
2019.3/8(金)13:30 東京オペラシティ コンサートホール
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040/神奈川芸術協会045-453-5080(2/11のみ)
https://www.japanarts.co.jp/