ヤノシュ・オレイニチャク ピアノ・リサイタル

ポーランドの伝統が息づくショパンの調べ

 映画『戦場のピアニスト』(2002年 監督:ロマン・ポランスキー)は、第二次世界大戦のさなかを生き抜くピアニストを描いた傑作だ。この作品で流れるすべてのピアノ音楽を演奏し、重要シーンで迫真の「手」の演技をしたのが、現代ポーランドを代表するピアニスト、ヤノシュ・オレイニチャクである。昨年の来日公演のチケットは各所で完売。スタンディング・オベーションを巻き起こした彼が、今年も日本ツアーを行う。
 ショパンはポーランドにとって「20世紀の二つの世界大戦の廃墟から祖国が立ち上がるために、大いなる勇気と希望を与えてくれた存在」とオレイニチャクは語る。一方で、ショパンの音楽は「ポーランド人だけが理解できるものでもなければ、ポーランド人だけが表現できるものでもない」と、その国際的に広く愛される魅力について述べる。権威あるショパン国際ピアノ・コンクールの常連審査員であり、ワルシャワ国立ショパン音楽院教授として、ショパンの伝統を次世代へと繋ぐ存在であるからこそ、彼の言葉は深い。
 7ヵ所を巡る今回のツアーでは、「軍隊ポロネーズ」「バラード第1番」などの名曲のほか、マズルカ、ワルツ、プレリュードなどから選りすぐりの作品も奏でる。「エスプリ・ショパン」と題するこのプログラムはオレイニチャクにとって「現時点でのひとつの到達点といえるもの」。ポーランドの伝統が息づくショパンの調べに、じっくりと耳を傾けたい。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2018年10月号より)

2018.11/3(土・祝)豊中市立文化芸術センター(06-6864-5000)
11/4(日)岡崎市シビックセンター(0564-72-5111)
11/6(火)代官山ヒルサイド プラザホール(03-5489-3705)
11/7(水)横浜/フィリアホール(045-982-9999)
11/9(金)静岡/グランシップ(中)(テレビ静岡事業部054-261-7011)
11/10(土)白河文化交流館コミネス(0248-23-5300)
11/11(日)つくば/ノバホール(029-856-7007)
問:欧州日本藝術財団 
http://www.ejfa.jp/