すみだ平和祈念コンサート2018 《すみだ×広島》 ジョセフ・リン(ヴァイオリン) J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ & パルティータ全曲

音楽と共に平和について考える

Photo:Koichi Miura
 1945年3月10日の東京大空襲で、多くの犠牲者を出した東京の墨田区。その魂を追悼するという思いで始まった「すみだ平和祈念コンサート」は、今年度が開館20周年シーズンとなるすみだトリフォニーホールにとって大きな意味をもつ。当初はヴェルディの「レクイエム」などが鎮魂の役目を担ったが、プログラムは徐々に拡大。2018年は戦争と関連性のある落語や映画上映なども加わり、多角的に戦争と平和について考える機会になることだろう。
 その中で特に“音楽と共に考える時間”となるかもしれないのが、J.S.バッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」(全6曲)を聴くコンサートかもしれない。3月4日(日曜日)の午後、2部にわたって全曲を演奏するのは、ソリストとしての活動と並行し、伝統あるジュリアード弦楽四重奏団のメンバーも務めているジョセフ・リン。クラシックのコンサートとしては彼の妙技による“演奏を聴く”ための時間なのだろうが、J.S.バッハの音楽を内面的な感情表現だと考え、その音に心を震わせながら静かに祈りを捧げるという時間にもなるはず。これはJ.S.バッハだからこそ可能なのかもしれない。
 もちろんそうした思惑にとらわれず、ヨーヨー・マら多くの音楽家たちが絶賛する名手のJ.S.バッハを、大ホールという空間ならではの不思議な静寂を感じながら、じっくりと堪能できるコンサートでもあるのだ。
文:オヤマダアツシ
(ぶらあぼ2018年2月号より)

2018.3/4(日) 第1回13:00 第2回16:30
すみだトリフォニーホール
問:トリフォニーホールチケットセンター03-5608-1212 
http://www.triphony.com/