ポーランドの精鋭集団による染み入る響き
今年の「東京・春・音楽祭」の開幕を飾るのはポーランドのシンフォニエッタ・クラコヴィアとバスバリトンのトマス・コニエチュニー。ポーランドの古都クラクフを拠点とする弦楽アンサンブルと、同国が生んだ世界的なバスバリトンが、2種類の意欲的なプログラムで共演する。指揮はウィーン・フィルのコントラバス奏者でシンフォニエッタ・クラコヴィア総監督兼首席指揮者のユレク・ディバウ。
ひとつは「マーラーに捧ぐ」と銘打たれたプログラム。マーラー作曲の交響曲第5番から第4楽章「アダージェット」と、連作歌曲「亡き子をしのぶ歌」、そしてマーラーが弦楽合奏用に編曲したシューベルトの「死と乙女」が演奏される。「亡き子をしのぶ歌」ではコニエチュニーの表現力豊かなマーラーを味わえることだろう。「死と乙女」からは、マーラーがこの曲に抱いたであろう、オリジナルの弦楽四重奏では収まりきらない大きな音のドラマが伝わってくるはず。
もうひとつは、「スラヴィック・メロディ——ペンデレツキ生誕85年に寄せて」。20世紀のポーランドを代表する作曲家ペンデレツキの作品から、シンフォニエッタ第3番「書かれなかった日記のページ」と、「ポーランド・レクイエム」より「アニュス・デイ」(弦楽合奏版)が演奏されるほか、ムソルグスキーの「死の歌と踊り」、ドヴォルザークの「弦楽セレナード」といった名曲が並ぶ。ペンデレツキゆかりの地であるクラクフのアンサンブルならではのプログラムだ。張りつめたペンデレツキの音楽と、のびやかなドヴォルザークとの対比もおもしろい。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2018年2月号より)
Ⅰ. マーラーに捧ぐ 2018.3/16(金)19:00
Ⅱ. スラヴィック・メロディ――ペンデレツキ生誕85年に寄せて 2018.3/17(土)15:00
東京文化会館(小)
問:東京・春・音楽祭チケットサービス03-6379-5899
http://www.tokyo-harusai.com/