ジャズ・テイストの“音楽劇”として蘇るブレヒト&ヴァイルの問題作
ドイツの劇作家ベルトルト・ブレヒトと作曲家クルト・ヴァイルのコンビといえば、1928年に初演された音楽劇《三文オペラ》で名高い。日本でもたびたび上演されてきた《三文オペラ》に比べ、1930年に初演されたオペラ《マハゴニー市の興亡》は上演の機会にほとんど恵まれてこなかったが、このたび、芸術監督・白井晃の演出によって、KAAT神奈川芸術劇場に登場することとなった。
白井はストレートプレイのみならず、オペラ、ミュージカル、音楽劇なども多く演出してきており、音楽を活かす舞台作りには定評あるところ。オペラの分野では《オテロ》《愛の白夜》《魔笛》《こうもり》《フィガロの結婚》などに取り組んできている。2007年には『三文オペラ』を手がけ、時代を映す演出を施して成功をおさめた。今回の舞台では音楽監督にジャズ・ピアニストのスガダイローを起用、ジャズのムードのもと、作品がいかなる時代精神を帯びるのか、気になるところ。舞台上には「マハゴニー市民席」なる客席を設けるということで、観客をも巻き込んだ演出プランが楽しみだ。
高い演技力と歌唱力で、白井作品でも活躍を見せる山本耕史をはじめ、マルシア、中尾ミエ、上條恒彦、古谷一行と、個性豊かなキャストが集合。ブレヒト×ヴァイルのまなざしが、白井演出を通して現代を鋭く貫く舞台となることを期待したい。
文:藤本真由
(ぶらあぼ 2016年9月号から)
9/6(火)〜9/22(木・祝) KAAT神奈川芸術劇場 ホール
問:チケットかながわ0570-015-415
http://www.kaat.jp