リリック・テナーとギターで紡ぐシューベルトの心象風景
テノールの望月哲也が、毎年共演者を代えながら3年間にわたってギター伴奏によるシューベルト三大歌曲集に挑む。その第一弾が、福田進一との「冬の旅」だ。ヒュッシュ、ホッター、フィッシャー=ディースカウ、プライ…。バリトンやバスの低声歌手たちが歌うイメージが強い「冬の旅」だが、実は概ねシューベルトの書いた原調に近いのはテノールの音域だ。恋人に別れを告げ、死を意識しながらさまよいつつ、最後まで“歌”を忘れない傷だらけの若者には繊細なテノールのほうが似つかわしい。そして、そんな沈潜する心象風景を歌わせたら、現代の日本で、美声にこまやかな表現力を兼ね備えた望月の右に出る歌手はいないかもしれない。ピアノに比べれば音量の振幅の狭いギターとの共演は、歌の表現をより自然に内側へ向かわせるはず。そしてそのギターがHakuju Hallの美しい響きを熟知した福田ならば、期待はさらに高まっていく。
文:宮本 明
(ぶらあぼ 2016年8月号から)
2017.2/18(土)17:00 Hakuju Hall
問:Hakuju Hallチケットセンター03-5478-8700
https://www.hakujuhall.jp