もちろん野心的なオリジナル曲や超絶技巧によるヴォカリーズも素晴らしい。しかしなんといってもジャズ・ヴォーカルの醍醐味は、それでスタンダード曲を聴く、ということにあるのではないか。その意味において小林桂は、まさにジャズ・ヴォーカルの正道を行く歌手だといえよう。10代でのCDデビュー後、25歳までに100曲を超えるスタンダード曲を録音。フレッシュさと豊かな感情表現を併せ持った彼のヴォイスは、それらの曲に秘められた新たな魅力を我々に教えてくれたものだった。
そんな小林桂が、厳選したスタンダード曲を収めた新作『ザ・スタンダード』の発売記念コンサートをおこなう。歌われるのは、「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」「モナ・リザ」「ムーンライト・セレナーデ」etc…。誰もが耳にしたことがある名曲を、彼の感性はどう表現するか。“天才少年”から、名実共に我が国を代表するジャズ・シンガーに成長した小林桂の名唱に、しばし暑さを忘れて浸りたい。
文:藤本史昭
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年6月号から)
8/25(木)18:30 日経ホール
問:日経ミューズサロン事務局03-3943-7066
http://www.nikkei-hall.com