ダンスの可能性を探る勅使川原の新たな挑戦
KARASを率いる勅使川原三郎が、この春両国・シアターXを舞台に連続公演を開催。ポーランドの作家、ブルーノ・シュルツの短編をもとにした創作シリーズ最新作『シナモン』と、改訂再演作『静か』の2作品を披露する。
2013年の『春、一夜にして』を皮切りに、これまで7作に渡りシアターXで発表してきたブルーノ・シュルツの創作シリーズ。美しくも妖しいその作品世界は観る者を魅了し、同時に勅使川原の新たな境地として大きな評価を博してきた。シリーズ8作目となる本作では、シュルツの第一短編集であり15作品からなる「肉桂色の店」より抜粋・再構成に着手。テキストの語りを巧みに駆使し、言葉とダンスのさらなる関係性を探る。
一方『静か』は、KARASの拠点・荻窪アパラタスの公演シリーズ “アップデイトダンス” で今年1月に上演された『静か 無音のダンス』の改訂再演作。タイトル通り一切の音を用いることなく、60分余りのステージを展開してゆく異色作だ。薄闇に包まれたステージに立ち、無音の空間で黙々と踊り続ける勅使川原と佐東利穂子のふたり。踊り手の内に響き渡る荘厳な音楽、そして会場を包む圧倒的な静寂が拮抗し、ひとつの作品を形成する。それは勅使川原が切り開いたダンスの新たな在り方であり、ダンスの可能性に対するひとつの答え。アパラタスの密なる空間からシアターXへとステージを移し、舞台はどう変貌を遂げるのか、その行方を見届けたい。
文:小野寺悦子
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年5月号から)
『シナモン 言葉の破片による動体彫刻』
4/28(木)〜5/1(日)
『静か 無音が構成する時間とダンス』
5/2(月)〜5/5(木・祝)
シアターX(カイ)
問:KARAS 03-6276-9136
http://www.st-karas.com