希望と愛に満ちた世界を目指して
国内外で幅広く演奏活動を展開する野尻多佳子のリサイタルは、毎回明確なテーマに基づいたタイトルを持つ。3月にサントリーホール(大ホール)で開催の今回は、野尻の「早春の希望に溢れた日がずっと続くように」との想いが込められた「Forever」。更に、3月は2011年に東日本大震災、1945年には東京大空襲という大きな出来事のあった月ということで、サブタイトルは「3月へのレクイエム」に。「この世紀が希望と夢に満ちた世界であるように」という祈りも込めた。その想いは選曲にも色濃く反映されている。聴力の喪失という音楽家にとって致命的な病におかされる前後に書かれた、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第14番「月光」と第21番「ワルトシュタイン」、20世紀アメリカの作曲家バーバーが第二次世界大戦後に書いたピアノ・ソナタ、そして16世紀ルネサンス後期の作曲家パレストリーナの「悲しみの聖母」(野尻多佳子編曲)が並ぶ。永遠不変の名曲を通し、彼女の力強いメッセージを感じたい。
文:長井進之介
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年2月号から)
3/5(土)19:00 サントリーホール
問:オーパス・ワン042-313-3213
http://www.takako-nojiri.com