世界から引く手あまたの作曲家 藤倉大が語る、いずみシンフォニエッタ大阪とともに“いま、届けたい音楽”

記念すべきシリーズ第1回は、縁深き巨匠 ジグムント・クラウゼを軸に

藤倉大 ©Taichi Nishimaki

 藤倉大が音楽監督を務めるいずみシンフォニエッタ大阪(ISO)は、これまでの定期演奏会(年2回)に加え、今年度から年1回の新たなスペシャル公演をスタートさせる。10月3日に第1回が行われるこのシリーズは、藤倉が敬愛する演奏家たちを招き、世界各国の魅力的な音楽を紹介するという内容で、「藤倉大のこんな音楽、いかが?」とコンサートタイトルに銘打つほど、思い入れの強いもの。「作曲家ジグムント・クラウゼを聴こう!」と彼はおすすめするのだが、その理由やコンサートの聴きどころを、リモートによる会見で語ってくれた。

「クラウゼさんは大巨匠でありながら、87歳の今も未来に向けて創作を続けておられるポーランドの作曲家です。僕が20歳の時に参加した、ポーランドの現代音楽サマーコースで出会いました。彼は若い音楽家と同じ目線で語るオープンな方でした。その年に受けたカジミェシュ・セロツキ国際作曲コンクールでも彼は審査員をしておられ、僕は史上最年少で優勝したのですが、何か不思議とご縁を感じていました。最近になって、そのサマーコースに講師で来てほしいと何十年振りに連絡をいただき、やり取りをしている中でISOの音楽監督の話をしたら、ぜひ君のアンサンブルのためにピアノ協奏曲を書きたいと言ってくださったのです。音楽監督として最初の委嘱がクラウゼさんの作品とは、大変名誉なことなので、相談の上お願いすることにしました」

 藤倉は今回のコンサートを通して、同時代の作曲家に委嘱することの大切さを知ってほしいのだと語る。

「『第九』は、ロンドンのフィルハーモニック協会がベートーヴェンに委嘱したから誕生したのです。委嘱していなければ『第九』はこの世に存在しません。クラウゼさんも同じです。彼はISOのために曲を書いてくれました。その初演の場に立ち会えるということがどれほどすごいことか。このコンサートはそんな特別な意味を持っています」

ジグムント・クラウゼ ©Bartek Barczyk

 コンサートではクラウゼの「ピアノ協奏曲」以外にも、藤倉の「ファゴット協奏曲」やISOの名誉音楽監督 西村朗の「ロプノール(彷徨える湖)」、他にもジョージ・ルイスの「Assemblage」、福岡似奈の「Body without Organs」が演奏される。その選曲の意図について、藤倉は次の通り説明する。

「クラウゼさんを中心に、人と音楽の繋がりから生まれたプログラムです。ジョージ・ルイスさんは学生時代から聴いていた作曲家。彼から『自分が教えている大学で講義をしてほしい』と頼まれ、行った先でお世話をしてくれたのが福岡似奈さんでした。彼女はルイスさんだけではなくクラウゼさんにも師事していたことが後でわかり、驚きました。お二人の曲は日本初演です。そして僕の『ファゴット協奏曲』のアンサンブル版を、ISOと英国バーミンガムのBCMG、アメリカのファゴット奏者サラ・アープによる共同委嘱作品として世界初演させていただきます。そして西村朗さんの作品は、これからもISOが演奏していくべきだと思っています」

※バーミンガム・コンテンポラリー・ミュージック・グループ。バーミンガム市交響楽団のメンバーにより構成される。

 20歳の藤倉がポーランドで出会った巨匠と、時を超えてISOを舞台に新たな音楽を作り出す。最後に、藤倉からのメッセージを紹介しよう。

「このスペシャルなプログラムを奏でるのは、僕の作品を幾度となく手掛けてくれたピアニスト 北村朋幹さんやファゴット奏者 中川日出鷹さん、そして指揮者の松井慶太さんとISOの仲間です。僕たちと同じ今を生きる人間によって書かれた音楽は、何も知らなくても直接身体で感じることが出来ます。だから僕は『クラウゼを聴こう!』と申し上げたい。住友生命いずみホールでお待ちしています」

左より:北村朋幹 ©TAKA MAYUMI/中川日出鷹/松井慶太 ©Ayane Shindo

文:磯島浩彰


いずみシンフォニエッタ大阪 藤倉大のこんな音楽、いかが?
「クラウゼを聴こう!」

2026.10/3(土)16:00 大阪/住友生命いずみホール
 15:30~ロビーコンサート
 15:45~プレトーク

出演
松井慶太(指揮)
北村朋幹(ピアノ)
中川日出鷹(ファゴット)
藤倉大(プレトーク)
いずみシンフォニエッタ大阪

プログラム
ジグムント・クラウゼ:ピアノと管弦楽のためのコンチェルティーノ[IAMとの共同委嘱/世界初演]
ジョージ・ルイス:Assemblage[日本初演]
福岡似奈:Body without Organs(2025)[日本初演]
西村朗:ロプノール(彷徨える湖)(2022)
藤倉大:ファゴット協奏曲[アンサンブル版世界初演]※イギリス(バーミンガム市交響楽団)とアメリカ(個人のファゴット奏者)との共同委嘱

※10/2(金)19:00~、チケット購入者限定のスペシャル・イベント(ジグムント・クラウゼの歴史と音楽性、魅力をお届けします)を予定。

問:住友生命いずみホールチケットセンター06-6944-1188
https://www.izumihall.jp


磯島浩彰 Hiroaki Isojima

長年、大手情報誌に勤務。編集から販売、チケット営業を経験。その後、オーケストラの広報、劇団の制作を経て、現在はフリーランスとして執筆活動中。エンタメ業界に携わること約40年。独自のネットワークを駆使したアーティストインタビューを中心に、音楽専門誌やWEBメディア、ホール・演奏団体の広報誌などに寄稿している。滋賀県大津市在住。