
ピアニスト・小菅優の豊かな充実が続いている。目下、〈ピアノ・ソナタ〉の多彩な魅力をたどるコンサート・シリーズの最終回が全国各地で開催されている。最後はテーマを〈黄昏〉として、モーツァルトにウェーバー、シューベルトと3人の作曲家が生涯の最期に遺したソナタを弾き、大好評の旅路もいよいよ至高の到達点へ。それに並行して数々の公演・プロジェクトも展開中だ。
6〜7月には、樫本大進×小菅優×クラウディオ・ボルケスという凄腕が集うトリオで全国4公演とは、こちらも魅力的! 「ヴァイオリンにチェロ、ピアノと並ぶピアノ・トリオは、なにしろどの曲もピアノが難しいんですが(笑)、三角関係のような対話が素晴らしい曲ばかり。弦楽器の二人も自分たちの往く道がはっきりしていながら、必ず全体を考えて弾く人ですから、ピアノがリードする必要もなくて」と、小菅は言う。名手揃いのトリオでなければという音世界が実現する。「大進君の素晴らしさはもちろん、クラウディオの弾くチェロのベース・ラインが本当に見事で!」というあたりも深く味わいたい。
ユニークな室内楽では「サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン」の2公演も。〈小菅優プロデュース「音楽朗読劇『借りた風景』」〉では、小菅がそのユニークな感性と才能を絶賛してやまない現代作曲家・藤倉大の作品を、〈小菅優と仲間たち〉では、シェーンベルク「浄められた夜」ピアノ三重奏版などじっくり美しい傑作たちを弾く。ここで共演するチェロの名匠ベネディクト・クレックナーとは6月にデュオ・コンサートも開催。「ここで弾く藤倉大さんの『シャドウ・パス』が本当に素晴らしい曲なんです!」。さらに「内面の豊かさ、知性を持って、すべてを音楽に向けている」と絶賛するヴァイオリンの金川真弓とは来年2月にもデュオ・コンサートでバルトーク作品など…と、名手たちとの豊かな時間が続く。
そして、来年秋からは新プロジェクト〈小菅優 Beethoven Variations plus+〉がスタートする。ベートーヴェンがピアノ独奏のために書いた変奏曲──意外に演奏される機会の少ないジャンルだが「どれも素晴らしい曲ばかりで、ダメな曲がひとつもない」と小菅も言い切る名作の宝庫。毎回テーマを決め、たとえば変奏曲とショパン作品を組み合わせる回、あるいはフランス印象派との回など、バラエティに富んだ組み合わせで傑作たちの魅力を照らし出そうという、これまた刺激的な企画。──さらなる高みへ、小菅優のピアノに導かれるこの先の旅路も楽しみだ。
取材・文:山野雄大
(ぶらあぼ2026年5月号より)
樫本大進 × 小菅 優 × クラウディオ・ボルケス トリオ 2026
2026.7/2(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:カジモト・イープラス050-3185-6728
https://www.kajimotomusic.com
他公演
6/30(火) 大阪/住友生命いずみホール(06-6944-1188)
7/4(土) 石川/北國新聞赤羽ホール(076-260-3555)
7/5(日) 北九州市立響ホール(093-663-6661)


