音楽×ダンス×演劇で作曲家の晩年を描く
東京文化会館は改修工事に伴う2026年5月の休館以降も、都内各地のホールや劇場にロケーションを移し自主公演を続ける。6月27日&28日には新国立劇場 中劇場で加藤昌則(音楽監督・作編曲・ピアノ)& 岩崎正裕(演出・脚本)が2024年に創作した音楽劇『ラヴェル最期の日々』を、中学・高校生向けの「シアター・デビュー・プログラム」として2年ぶりに再演する。

フランス近代の作曲家モーリス・ラヴェル(1875〜1937)の私生活は元々ヴェールに包まれていたが、1927年頃から軽度の記憶障害に悩まされ、32年の交通事故を境に言語障害が一気に悪化、晩年は周囲との接触を避け、一日中ぼんやりと過ごしていたという。『最期の日々』は言葉が不自由になったラヴェルをダンサーの小㞍健太(振付も担当)が深い感動とともに演じ、俳優の西尾友樹が数少ない友人と狂言回しの役で好演した。
加藤は2時間の中にピアノ曲、室内楽曲、管弦楽曲、ヴァイオリンとピアノのための「ツィガーヌ」など広範囲の楽曲を自作も交えて編み込み、舞台を観ながら創作の軌跡にも触れられるようにしつらえた。ヴァイオリンの橘和美優、チェロの清水詩織は初演から引き続き出演、バンドネオンは仁詩 Hitoshiから北村聡に替わる。
「シアター・デビュー・プログラム」では成長段階に合わせた題材を選び、音楽と他のジャンルがコラボレートした創作舞台芸術に一流アーティストを起用、体験の機会を提供してきた。今回は中学生と高校生が対象だが、「ボレロ」をはじめ彼らの年齢でも一度は耳にしたことのあるメロディの生みの親が苦悩に満ちた人生を送り、それを献身的に支えた友人の力で何とか生を全うしたドラマに触れ、感じるものは多いはずだ。
文:池田卓夫
(ぶらあぼ2026年5月号より)
Music Program TOKYO シアター・デビュー・プログラム 『ラヴェル最期の日々』
2026.6/27(土)、6/28(日)各日14:00 新国立劇場 中劇場
問:東京文化会館チケットサービス03-5685-0650
https://www.t-bunka.jp

池田卓夫 Takuo Ikeda(音楽ジャーナリスト@いけたく本舗®︎)
1988年、日本経済新聞社フランクフルト支局長として、ベルリンの壁崩壊からドイツ統一までを現地より報道。1993年以降は文化部にて音楽担当の編集委員を長く務める。2018年に退職後、フリーランスの音楽ジャーナリストとして活動を開始。『音楽の友』『モーストリー・クラシック』等に記事や批評を執筆する他、演奏会プログラムやCD解説も手掛ける。コンサートやCDのプロデュース、司会・通訳、東京音楽コンクール、大阪国際音楽コンクールなどの審査員も務める。著書に『天国からの演奏家たち』(青林堂)がある。
https://www.iketakuhonpo.com

