ロシアの新鋭ピアニスト、マロフェーエフによる初のソロ・アルバムは、かなり野心的だ。グリンカ、メトネル、ラフマニノフ、グラズノフ。故郷を離れ国外で生涯を終えた4人のロシア人作曲家の作品を並べ、ノスタルジーを燃え上がらせる。メトネルの「忘れられた調べ」第1集では、強弱の幅が広く、ダイナミックに高潮。グラズノフ作品も、類例ないほどにエモーショナルに響く。そしてラフマニノフのソナタ第2番は、官能的かつ強靱の極み。コントラストといった、よそ行きの言葉が相応しくないほどの生々しい感情の切り替えだ。クレッシェンドでも、感情が波となって襲ってくる。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2026年4月号より)
【information】
CD『忘れられた調べ―ロシア・ピアノ作品集―/アレクサンダー・マロフェーエフ』
グリンカ(バラキレフ編):歌曲集「サンクトペテルブルクへの別れ」より第10曲〈ひばり〉/メトネル:「忘れられた調べ」第1集/ラフマニノフ:ピアノ・ソナタ第2番(1931年改訂版)/グラズノフ:牧歌 他
アレクサンダー・マロフェーエフ(ピアノ)
ソニーミュージック
SICC 30937〜8(2枚組) ¥3960(税込)

鈴木淳史 Atsufumi Suzuki
雑文家/音楽批評。1970年山形県寒河江市生まれ。著書に『クラシック悪魔の辞典』『背徳のクラシック・ガイド』『愛と幻想のクラシック』『占いの力』(以上、洋泉社) 『「電車男」は誰なのか』(中央公論新社)『チラシで楽しむクラシック』(双葉社)『クラシックは斜めに聴け!』(青弓社)ほか。共著に『村上春樹の100曲』(立東舎)などがある。
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