中川優芽花の待望のデビューアルバムは、ライブ録音によるシューマンとラフマニノフの作品集。前者の「子どもの情景」が持つ親密さと、後者の前奏曲 op.23(抜粋)や「パガニーニの主題による狂詩曲」が放つ広がりと奥行きに、選曲のコントラストが効いているが、いずれの演奏にも中川らしい敏捷性と躍動感、陰影美が満ちている。とりわけ、ラフマニノフの前奏曲第5番は、リズムの際立たせ方が新鮮で生命力に溢れる。髙橋直史指揮・大阪交響楽団との「パガニーニの主題による狂詩曲」は、中川の闊達な音楽にオーケストラが非常によく呼応し、精彩で生き生きとした協奏を聴かせる。文:飯田有抄
(ぶらあぼ2025年12月号より)
【information】
CD『中川優芽花 デビュー!』
シューマン:子どもの情景/ラフマニノフ:前奏曲 op.23-2,23-4~6、パガニーニの主題による狂詩曲 他
中川優芽花(ピアノ)
髙橋直史(指揮)
大阪交響楽団
収録:2024年9月、浜離宮朝日ホール&ザ・シンフォニーホール(ライブ)
キングレコード
KICC-1636 ¥3300(税込)

飯田有抄 Arisa Iida(クラシック音楽ファシリテーター)
音楽専門誌、書籍、楽譜、CD、コンサートプログラム、ウェブマガジン等に執筆、市民講座講師、音楽イベントの司会等に従事する。著書に「ブルクミュラー25の不思議〜なぜこんなにも愛されるのか」「クラシック音楽への招待 子どものための50のとびら」(音楽之友社)等がある。公益財団法人福田靖子賞基金理事。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Macquarie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。



