
リッカルド・デッラ・シュッカ/グスターボ・カスティーリョ ©Fernando David
佐渡裕&新日本フィルの「第九」……例年大人気の公演だが、今年はこれまで以上に期待が大きい。それは、2022年のミュージック・アドヴァイザー就任(23年より音楽監督)から3年を経た佐渡と新日本フィルの進化が顕著だからだ。まず新日本フィルの“鳴り”が良くなり、緻密さもアップ。何より音楽のエネルギーが増大している。また佐渡のアプローチは、25年1月定期におけるマーラーの交響曲第9番の渾身の名演以来、踏み込みが深くなり、生気やパッションをより感じさせるようになった。こうした状況下ならば、佐渡が柱に掲げる“ウィーン・ライン”の極致たるベートーヴェンの「第九」がひと味違った演奏になるのは確実。ゆえに今回こそ未聴のファンも耳にしたい。
ソリスト陣は内外の著名歌手ばかり。兵庫における佐渡裕芸術監督プロデュースオペラで主要役を歌った歌手揃いである点が心強いし、栗友会合唱団は新日本フィルの声楽付大作での共演経験が豊富なだけに信頼度が高い。したがって、今回複数行われる公演のどれを選んでもいいのだが、注目すべきは12月18日のコンサートだ。4歳から入場可能なこの日は、上演前に「イラストとお話で綴る『第九ものがたり』」の時間が設けられ、専門用語を一切交えずに聴きどころが案内されるというから、ビギナーも安心して臨むことができる。
世相的にみて「人類はみな兄弟」と歌われる「第九」の重要度は増すばかり。曲は演奏に身を浸すだけで感動を得られる名作だし、佐渡&新日本フィルのコンビネーションの深まりを確認する意義を含めて、ぜひとも足を運びたい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2025年11月号より)
佐渡 裕(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団 「第九」特別演奏会2025
2025.12/17(水)19:00 サントリーホール
12/18(木)19:00、12/20(土)14:00 すみだトリフォニーホール(12/20完売)
12/19(金)19:00 横浜みなとみらいホール
12/21(日)14:00、12/22(月)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:新日本フィルチケットボックス03-5610-3815
https://www.njp.or.jp


